AriaLien

*HANAHA Novel & Life BLOG*

カテゴリ: ◆Schwarz Mythos

アーケードを潜り抜けた其処には私の知らない世界が広がっていた。「いらっしゃいらっしゃい、今日獲れたばかりの新鮮な魚だよ!」「ちょいと其処の人、いいから見ていきな、損はさせないぜ」「この品物は遥かアナトリから持ち込まれた美肌クリームだよ。本日限定でお安くし ...

「あぁ、完全に見失った」「…」少し前を歩くザシャルがため息混じりに云った言葉はスルリと耳を通り抜けて行った。「この人混みじゃそう簡単に見つける事が出来ない。仕方がないから城に帰るよ」「…」「おい、訊いているか?」「…あ」不意に肩をトンッと小突かれ我に返っ ...

『こんな処で何してる』そう声を掛けられ驚くまま振り返ると其処には「…」「おい?」私の目の前で掌をヒラヒラ振っている子をただ茫然と見つめていた。其処にいたのは私と同じ年頃の男の子だった。ただ其の男の子の風貌に私は驚き、固まってしまったのだ。「おーい、息、し ...

彼は名前がないと云った。自分が誰から生まれ、どうして名前がないのか、何も解らないと云った。(不思議な子)彼の事を知れば知る程に興味深く、そして何故か心惹かれてしまって仕方がなかった。「…名前、つけてもいい?」「え」気が付けば私は彼に向かってそう云っていた ...

初めての社会見学はとんでもない結果になってしまった。「申し訳ありません」「…」城に帰った私たちを待っていたのは今までに見た事のない形相をしたお父様だった。そんなお父様に深く頭を下げて謝罪しているイグナーツを私は茫然と見つめていた。「責任者である僕がしっか ...

「あ…」イグナーツやフェルの様に言葉を発せず、ただ黙って立っていたザシャルが何故か私を部屋の前で呼び止めた。「少し、付き合え」「何処に」私の問い掛けには答えず、ザシャルはスタスタと先を行ってしまった。(…何なのかしら)不審に思いながらも私はザシャルの後を ...

あの社会見学を境に、アメリアにはとある変化が見られる様になった。「お父様、今日は午後からフェルと乗馬の稽古をしたいと思うの。いいかしら」「あぁ、勿論だ。いざという時に馬にも乗れなかったら不便だろうからな」「ですわよね。初めてだからまずは馬に慣れる事から始 ...

「おーい、アーリァー!」「フェル」遠くからブンブンと手を振るフェルに私も手を振って応えた。フェルの傍には一頭の馬が手綱を引かれ佇んでいた。(わぁ…大きい)午後からフェルと約束していた乗馬をしに城内の馬場までやって来た。「姫様、ようこそ馬場へ」「…あなたは ...

初めての乗馬教室を終え、私は部屋に帰るために中庭を通っていた。隣には先刻まで触っていた馬について熱く語るフェルがいた。「馬の知能ってすっげぇ高いんだぜ?馬に慣れていない奴が乗るとからかって振り落とそうとしたりするんだって」「振り落とすって…からかいの内に ...

毎年この時期になると城内が少しだけ騒がしくなる。「招待状の返信はこれで全てですか?」「料理の発注数は?これが最終確認ですよ」「貴賓室のシャンデリア、中央二段目の左から3番7番8番の蠟がなくなりかけています。直ぐに取り替えてください」「すみません、注文していた ...

そして私の誕生日当日。其の日は朝から私の為に集まってくださった来賓者ひとりひとりに挨拶をして回っていた。「誕生日おめでとう、アメリア。しかしあんなにちいさかったお姫さんがもう11とは…歳を取ると月日が早く感じるよ」「ありがとうございます、叔父様。毎年遠いア ...

私の誕生日会は主役の私が子どもという事もあって夜の早い時間にはお開きになっていた。其のまま帰宅する人や来賓者たち同士が歓談をするために別の部屋に移動したりするのを見送って、私はようやく主催者としての任を解かれたのだった。少しだけ疲労感を覚えた体で部屋に向 ...

 『だから──最初の時ほど厭だとは思っていないし嫌ってもいない』てっきり嫌われていたと思っていたザシャルからの言葉に心の底から安堵している私がいた。其れと共に湧き出る疑問をつい口にしてしまう。「だったら何故今日の会に参加してくれなかったの?」「…」「ほん ...

誕生日会の翌日、其の日の午前中はザシャルの歴史の講義があった。 「この前の続き、教本の41ページを開いて」「…」(いつも通り…ね)昨日の少し気まずい出来事から一夜明けて最初に顔を合わせたザシャルがどんな態度を私に取るか少しだけ気になっていたけれど──(気に ...

思いがけずザシャルと和解した其の日の深夜── 「…」今夜は新月のせいで月を見る事が出来ない。ベッドから見える真っ暗な夜空にため息をついた。「…眠れない」ベッドに入ってからもう何十分過ぎただろう。何故か今日に限って眠る事が出来ない。こんな事は初めてだった。 ...

とある春の日の深夜。  城の自室のバルコニーで私はノワールと2度目の再会を果たした。 「しっかしすげぇな城の中って」 「あまり見ないでね、恥ずかしいから」 突然現れたノワールを部屋の中に招き入れた。 (外は寒い ...

「は?なんだって?」「だから…この樹を伝って私の部屋に入り込める?って訊いているの」日課になっていた乗馬の稽古を終えて馬場から城内に帰る道すがら、私はフェルに何気なく訊いてみた。私が指さす処にある細い樹の天辺あたりに私の部屋のバルコニーの手すりがあった。 ...

部屋に着いてからも茫然とした気持ちが私の中に燻っていた。 『最近来ないんだな』『書庫室。前はよく来ていたと訊いた』(其れって…私の存在を気にしているという…事よね?)気にしているから多分司書にでも訊いたのだろう。『俺がいるから遠慮しているのか』『…ふぅん ...

書庫室内に差し込む橙色の西日が時の流れを教えてくれた。「じゃあ、俺は帰る」「あ…はい」書庫室で其々に本を読んでいた私たちに特に何か起きる事無く、私にそう告げてザシャルは先に書庫室を出て行った。「…はぁ」自然とため息が出た。 『でもあんた、子どもなんだから ...

 『でも今は違います!わたくしはちゃんとイグナーツ様のお気持ちを受け入れる覚悟が出来ました』偶然聞こえてしまった会話の中に出て来た名前に酷く心当たりがあった。(イグナーツって…あのイグナーツ?)私の知る限り今この城の中に居る人で【イグナーツ】という名前の ...

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