AriaLien

*HANAHA NOVEL&LIFE BLOG*

カテゴリ: ◆Reversal-リヴァーサル-

「もぅ…もうもうもう~~」「ごめん、ごめんね杏奈ちゃん」「もう、こんな時ばっかりちゃん付けでぇ!」「だって…」「……」しゅんとなった恭輔を見たら怒っていた気持ちが徐々に鎮まって来た。(…恭輔のせいじゃないのに)一度沸点を越えた怒りは申し訳なさに変換した。 ...

(キュウちゃん…?)そう聞こえた声と駆け寄って来る足音に思わず振り向くと「キュウちゃぁぁぁぁぁん──!!」「なっ!」「えっ」いきなり駆け寄って来たド派手な女の人が恭輔に抱きついた。其の反動で繋がれていた私の手は恭輔の腕から放れてしまった。「キュウちゃん、 ...

恭輔の部屋に来たのは今日が初めてだった。彼氏の部屋に初めて訪問──というドキドキさがあったけれど、今の私は其のドキドキだけではなく、別の意味でもドキドキしていた。(恭輔の部屋…綺麗)モノクロベースでまとめられている室内はとても居心地がよかった。(この部屋 ...

少し待っていて、という恭輔の言葉を受けてソファで恭輔の動向を見つめていた。恭輔は備え付けのクローゼットの中の段ボールを順に取り出して、そして多分一番奥にあっただろう段ボール箱を取り出して「これだ」とひと言呟いた。(なんだろう…何が入っているんだろう)そん ...

其れから恭輔は過去の事を全て話してくれた。若気の至りでハマっていたバイトの事。そして先刻出逢った女性は其の時代、相手役になっていたAV女優だった事。体目当てで熱心に付き合いを迫る女性がたまにいるのだという事。そして「バイト辞めて、一生懸命自分を取り戻そうと ...

私の彼は【ナイン】という源氏名の元AV男優でした。(そっか…九重の九でナイン…そして9でキュウちゃんな訳ね)幾つもあるナイン出演のAVのパッケージを見ながらそんな事を考えていた。(…これ、観たいような…観たくないような…)恭輔がどんな風に演じているのか気になる ...

私が思っていた以上に滅茶苦茶に愛された一夜が過ぎ、ふと瞼に光を感じて薄っすら目を開けた。(あぁ…もう朝、なんだ)夢みたいなシチュエーションに今まさに自分の身が置かれていると自覚するとほんのり裸の体が熱を孕んだ。「…」隣で健やかな寝顔を晒して眠っている恭輔 ...

「えっ、実家に行く?」「…うん」休日明けの出勤日。お昼休憩にまた私は志麻子に話を訊いてもらっていた。「ちょっと、もうそういう話、出ているの?」「そういう話って」「結婚に決まっているでしょう」「まさか!付き合い始めてから一ヶ月も経っていないのよ」「…まぁ、 ...

しつこい誘いに困っていた私を助けてくれた恭輔にお礼を云った。「九重くん、ありがとう。助かったわ」今はふたりきりだけれど場所が社内の廊下だったので余所行きモードで話している私たち。「いえ…其れよりも彼、あんな風によく誘って来るんですか?」「ううん、今が初め ...

GW初日という事もあって高速道路は勿論、何処も彼処も人でいっぱいだった。其のせいで恭輔の実家に着いたのは出発から4時間後だった。「んーやーっと着いたぁ」「運転ご苦労様、疲れていない?」「平気。杏奈が色んな事してくれたから」「っ」(渋滞中の車の中で繰り広げられ ...

店舗続きの奥が住宅部分になっている恭輔の実家。其の雰囲気は昔ながらのよき日本家屋という感じの和式仕様だった。「其処、どうぞ。寛いでくださいね」「ありがとうございます」恭輔のお母さんが座布団を出し、座る様に促してくれる。遠慮なく其処に座ると同時に両端に恭輔 ...

「父さんは九重 浩輔(ココノエ コウスケ)母さんより10歳年上の52」(10歳上…年齢的な事があって家族に反対されたのかな)家族の紹介を続ける恭輔の話を訊きながら、つい先刻の駆け落ちの件が心に残ってしまっている。「で、先刻の雅哉(マサヤ)と真己子(マミコ)は小学4年と3年」(恭 ...

恭輔の実家から戻った私は、其のまま恭輔の部屋に転がり込んでいた。「はぁ…も、もう…ダメ」「ダメじゃない…まだ全然足りないよ」「っ、ひゃぁん、そ、其処ぉぉ~~」「ふっ…ほら、杏奈だってまだまだじゃない」「~~~」恭輔の実家に一泊二日した後、私は恭輔の部屋で ...

GW明けの最初の出勤日。「これ静岡のお土産です」「おぉ、九重くん、実家静岡なの?」「はい」「おれの嫁さんの実家も静岡だよ。どの辺?」「御殿場です」「あぁ、あれだ、何とかってアウトレットがある処」「近いですよ、実家からだと」「いいねぇ~」「…」恭輔が庶務課の ...

私の中では既にブラックリスト入りしていた一橋さんが声を掛けて来た。 (本当…懲りないというかめげないというか)汚く云えばしつこくてウザい!と思ってしまっている一橋さんに対して私には繕う笑顔もなかった。「何か御用でしょうか」「今晩お時間ありますか」「ないで ...

「佐東さん、大丈夫ですか?」「!」 不意に隣から掛けられた声で我に返った。「あの…噂なんて気にしないでくださいね」「きょ…こ、九重くん」一瞬『恭輔!』と呼び、縋り付きたかった。(恭輔…どう思っているのかな)生憎今日の昼は同僚と外に食事に行っていた恭輔。あ ...

あの珍事から数日。相変わらずこそこそと噂話する人はいたけれど、大方の人は勤務時間内にくだらない話で盛り上がる程暇でも子どもでもなかった。(まぁこんなものよね)私なんかの話を面白がる人は大体限られている。其の少数の人が何と云おうと、思おうといちいち気にして ...

 『佐東さんの彼氏って九重なんですね』一橋さんの口から出た言葉に一瞬たじろいだ。(なんで知って…)「なんで知っているんだって顔をしていますね。やっぱりそうなんだ」「!」「すみません、カマをかけてみただけです。確信はありませんでした」「…」「ただ彼氏がいる ...

気が付けば其の日も終業時間になっていた。「お先に失礼します」「お疲れ様でした」いつもの通り素っ気なく帰る挨拶を恭輔にして私はフロアを後にした。(今日は…カラオケルームか)毎日場所を変えて恭輔と落ち合っていた。そういうゲームみたいな待ち合わせも愉しくて私の ...

カラオケルームなのに何の曲も流れていなかった。 ただ私の鼻声気味の言葉が響き、やがて其れも消えると少しの間、恐ろしい程の静寂が辺りを包んだ。そして「…はぁ…全く阿呆らしい」そんな恭輔の呆れた声が部屋に漏れた。「阿保らしいって…」「杏奈、そんな言葉なんかで ...

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