AriaLien

*HANAHA Novel & Life BLOG*

カテゴリ: ◆久遠の旋律

一目惚れというのはよく訊くけれど、まさか一聴き惚れなるものが存在するとは思わなかった。「あ~無理無理無理無理」「な、なんでそんな連呼するんですかっ」「だって100%無理だからな」「100%無理だなんて…やる前から決めつけないでください!」「おまえなぁ…身の程知ら ...

久遠寺智里という人が作った曲を初めて聴いたのは8歳の時だった。テレビから流れて来たほんの30秒のCMの中で使われていたピアノ曲だった。其の旋律を聴いた瞬間、私は其の音に恋をした。なんて甘くて静かで、そして時々見え隠れする激しさ──一瞬、この曲を弾いている人の人 ...

ガタンガタン鈍行列車の心地よい揺れ。そして車窓に広がる風景が徐々に緑色を濃くして行くのをぼんやりと眺めていると少しずつ瞼が重くなって来る。久遠寺智里との面会のアポが取れてから三日後。私は指定された約束の場所に向かうために電車に乗っていた。其の場所は都心か ...

「こ…此処、だ…」電車に揺られる事1時間半。駅からバスを乗り継いで更に1時間。終点の停留場からタクシーで山道を走る事30分。(着くまでにほぼ半日かかるなんて!)グッタリしつつもようやく着いたという気持ちが疲れを半減させていた。「…しかし」タクシーを降りた場所 ...

(…あっ)リビングに入って来た人を見て私は絶句した。「ようこそ。わざわざこんな辺境の地まで呼んでしまって悪かったね。おれが久遠寺です」「…あ…は、はいっ」目の前に現れた久遠寺智里は年齢から想像していた容姿とは全く違っていた。(イ…イケメン過ぎるっ!)キラ ...

他の人と久遠寺智里の曲は全然違う。 其れは聴けば解る事。だけど何処がどう違うのか──其れを口に出して説明する事は難しかった。「よし、解った」「!」パンッと掌を叩いた久遠寺智里はとても面白く云った。「君、しばらく此処にいなさい」「…は?」「おれが新曲を書き ...

『──という訳でおれが曲を書き上げるまでこのお嬢さんの世話も宜しくお願いね、美加』そう云って久遠寺智里は自室だという地下室に閉じこもってしまった。「先生は曲作りに入ると滅多に部屋から出て来ません。なのでどうぞ自由にお過ごしください」「…はい」中山さんに案 ...

部屋でぼんやりしていると色んな事が頭を過って気が滅入りそうだった。(やる事がないなぁ…)しばらく此方に滞在する事になった経緯を事務所の社長に連絡すると『もし負けても寝るんじゃない!曲なんてもらわなくてもいいから絶対に寝るなよ!』と意外な言葉が返って来た。 ...

慌てて振り向いた視線の先にいたのは久遠寺智里だった。「え…な、なんで」「美加に訊いたんだよ。広場の方に君が行ったと。迷子にならない様に迎えに来たよ──其れより、今歌っていたのは『eternal』だね」「っ!」聴かれていた──と思った瞬間、顔から火を噴きそうだった ...

「何かありましたか?」「…え」ダイニングテーブルに中山さんと向かい合って夕食を頂いている席でそう問われた。「先生、珍しく本気モードだったので…そう、思ったんですが」「…」「よかったら話してもらえませんか?」「…はい」私は広場であった事を簡潔に中山さんに話 ...

其の日の夜は中々寝付けなかった。(なんだか色んな事があり過ぎて…)私にとっては刺激の強い一日だった。12年間憧れ続けた久遠寺智里に出逢えた喜びと戸惑いと、そして…(焦燥感)久遠寺智里という人に接すれば接するだけ曲から感じたイメージと若干のズレを感じてしまう ...

促されてやって来たのはピアノが置かれている10畳ほどの部屋だった。「此処は…」「この家に二台あるピアノの内のひとつ。もう一台は地下のおれの部屋にある」「…こんな立派なピアノが二台も」(流石久遠寺智里の家)思わずゴクッと喉が鳴ってしまった。「そういえば君はピ ...

一曲目、二曲目、三曲目──と流れる様に旋律が次々と部屋中に響き渡っていた。(す…凄い)目の前で奏でられる久遠寺智里のピアノ姿に感嘆のため息をついた。(凄く絵になるっていうか…圧巻!)最後の四曲目を聴き終えた時、其れ等全てが今まで世の中に出されていない曲だ ...

『嘘じゃない。 ゼロの可能性があるなら100の可能性だってあるだろう?弾いた四曲全ておれが作曲した正真正銘の最高作品だ』久遠寺智里が放った其の言葉は、私が賭けに負けた事を意味していた。「うそ…嘘」「だから嘘じゃないって。ぜーんぶおれが作った曲」「…」「だから ...

ボロボロになった私の耳に届いた声に沿って視線を流すと、其処には今までとは雰囲気が全く違う中山さんがいた。「茶番は此処までだ──美加」「……ぇ」続く言葉に心が凍り付く。(中山さんが…美加って…)美加──と中山さんが声を掛けた視線の先には久遠寺智里がいた。( ...

少し落ち着いた私は久遠寺さんに連れられリビングまで戻って来た。其処で久遠寺さんが淹れてくれた紅茶をひと口含んではぁと息を吐いた。「大丈夫?」「…はい、随分、落ち着きました」「そう…でも、よかった」「え」ソファの隣に座る久遠寺さんが少し表情を崩しながら続け ...

「あの…訊いてもいいですか?」「何?」「どうして…弱小事務所の、売れていない私なんかのアポをOKしてくれたんですか?」そう。最初にあった疑問はこれだった。売れていない無名のアーティストのアポなんて一蹴されるだろうと思っていたのに予想に反してOKを貰った理由は ...

『はぁ?!おい、てめぇ…なんて云いやがった?!』「ちょ…社長…声大きいです」『大きくもなるだろうが!おい、もういっぺん云ってみやがれ』「だから…私、結婚します」『誰と』「久遠寺智里さんと」『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!』 其れから社長は何を云っているのか全 ...

「きゃっ!」「あぁ、ごめん、優しく下ろしたつもりだったのに妙な焦りから乱暴になってしまった」「い、いえ…大丈夫です…」久遠寺さんから熱っぽく求められて、どう返したらいいのか戸惑っている内にお姫様抱っこをされて地下にある一室に連れ込まれた。(ピアノが置いて ...

久遠寺智里さんと結婚すると決めてから一ヶ月後、ふたつのスポーツ紙の片隅にちいさな記事が載った。【シンガーソングライターのLiLiCa(20)一般男性と電撃結婚。今後のアーティスト活動は未定】「あぁーこういう時こそ堂々と久遠寺智里の名前を出してCD売り上げに貢献した ...

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