AriaLien

*HANAHA Novel & Life BLOG*

カテゴリ: ◆蒼い樹が薫る

私と薫さんは、蒼さんから借りた車に乗って商店街を目指した。「わぁ」車窓から見る風景は目新しいものばかりで思わず感嘆の声が出てしまう。「ルイカ、危ないから窓から手、出さないでね」「だ、出しません」全開にした窓から入る風がとても心地よくて、思わず風を手で受け ...

結局薫さんの判断は正しかった。「はぁぁー疲れたぁ~」「…ルイカ、買い過ぎ」商店街での戦利品をドサッとキッチンテーブルに置く。野菜や魚、肉やらで持参した買い物袋はパンパンになっていた。「だって思った以上に安くて…冷蔵庫が空っぽだったからつい」「うん、安かっ ...

淹れたての熱いお茶をふぅふぅさせながら飲んでいる蒼さん。私は食べ終えた食器を片付けようとお盆を手に取ると「…おまえさ、林宮寺って知ってるか」「は?りんぐうじ…ですか?えーっと…」「…」「知らないです」「…」「?」いきなり問い掛けられた事に私が首を傾げると ...

「蒼さん、涙花に名前教えたって本当ですか?」「あぁ?んだよ、あの小娘、早速おまえにチクッてんのかよ」「そういう云い方しないでください。涙花は純粋に蒼さんから直に教えてもらった事が嬉しかったみたいで…別に林宮寺の名前に反応していた訳じゃないですよ」「あっそ ...

私が上京していっちゃんの会社兼住宅の家政婦という仕事に就いてから早一ヶ月が過ぎた。桜の季節から若葉茂る季節になって、世間ではゴールデンウィークという大型連休に入ろうとしている頃だった。「ふぅ、お洗濯完了」高層マンションには珍しく小さいながらもベランダがつ ...

「涙花、明日何処か遊びに行かないか?」「……え」ある日洗面所を掃除している私の元に帰宅したばかりのいっちゃんがやって来てそう云った。「明日、休みが取れそうなんだ。だから遅くなったけど涙花の歓迎会を兼ねて遊びに行きたいなと思ったんだけど」「…本当?」「あぁ ...

蒼さんが食事を終え自室に戻った頃、いっちゃんが食卓に着いて食事を始めた。私はお茶を淹れながらいっちゃんが話しかける事に答えていた。「涙花は何処か行きたい処ってあるのか?」「ううん、だってよく解らないから、まだこの街の事。いっちゃんが連れてってくれるなら何 ...

暗闇の中でおにぎりを食べていた薫さん。今まで見た事がないヨレヨレな姿に不覚にもときめいてしまった私だった。「私、晩ご飯の時薫さんを呼びに行ったんですけど、何も応対がなかったから心配していたんですよ」「あぁ…多分、寝ていたんだと思う。二時間くらい意識がない ...

薫さんから頼まれた作業はミシンを使わない、直線縫いでOKな縁取りのレースの縫い付けや、リボン製作、ボタン付けなどの細かい部分だった。部屋には薫さんが器用に操るミシンの針の音だけがカタカタと響く。(わぁ…薫さん、布さばきが凄い)時折薫さんの作業風景を横目で見 ...

小さい時に観た外国のアニメのキスシーンがとても印象深かった。眠っているお姫様に王子様がキスをして目覚めさせるという素敵なシーン。恥ずかしいなと思いながらも何故かキスというのは奇跡を起こすほどに大切な行為であり、神聖なものだって思って来た。だからこそ──『 ...

ソファに座っていっちゃんが淹れてくれたミルクティーをひと口飲むと少しだけ気持ちが落ち着いた。「大丈夫か?涙花」「……うん」三人掛けのソファの真ん中に座っている私の左隣にはいっちゃん。そして向かい側の同じく3人掛けのソファに蒼さん。そして薫さんはベランダに背 ...

薫さんが私の事を好きだと云った──(そんな…まさか)薫さんの告白を半信半疑で受け取って、ただ茫然としていると「!」いきなり横から伸びて来た掌が私の両頬をムギュッと掴み、其のまま顔が動かないようにされた。「てめぇ、たかがキスされて告白されただけで薫を好きに ...

『俺だって涙花の事が好きなんだ!』そう云ってくれたいっちゃんに飛びつきたい衝動に駆られた。──だけど「へぇ、じゃあマナとの事はもう完全に吹っ切れているんだな」(えっ)「そうなんだね、マナとはちゃんと別れているんだね?だからルイカの事、好きだって云えるんだ ...

いっちゃんには上京したこの街で恋人が出来ていた。しかも其の恋人との間に…(子ども…堕したって…)私には何もかもが縁遠い話で、ただただ驚く事しか出来なかった。「マナは俺との子どもを簡単に殺せてしまうんだなと思ったら…例えようもなくやるせなくて…妊娠した事も ...

「いい加減に離れろ!」「!」いきなり私を包み込んでいた温もりがなくなった。あっ、と気が付いた時にはいっちゃんは私の体から引きはがされていた。「樹、てめぇ調子こくんじゃねぇぞ!」「急になんですか、蒼さん!ビックリするじゃないですかっ」「…マナとの事、スッキ ...

今日という一日で色んな事が動いた。薫さんからされた初めてのキスから始まった騒動。まさかと思った蒼さんからのキスと告白。そして私が知らなかったいっちゃんの五年間と恋愛事情。其処から私の初恋は綺麗さっぱり昇華して、そして新たに現れたふたつの恋に戸惑う事になっ ...

あの騒動から数週間。表面上は何もないような平穏な日々が過ぎていた。いっちゃんはマナさんとの事を詳しくは教えてくれなかったけれど「時間が解決する状況だと思う」と心なしか晴れやかな感じでありながら、これまでと何ら変わりない日々を過ごしていた。そして蒼さんは相 ...

薫さんに感じている恋心。其れを自覚した私はいつも以上に挙動不審になってしまっていた。「…ルイカ、ちょっといい?」「! は、はい」「この生地、こっちとこっち、どっちの手触りが好き?」「あ…あの」「ルイカが肌に直に触れて気持ちがいいなって思う方でいいよ」「! ...

最初は気のせいだと思っていた。──だけど「はぁ?つきまとわれている?」「…」「はい、なんだかそんな気がするんです」珍しく夕ご飯の後リビングにいた蒼さんと薫さんにお茶を淹れながら話した。「最初は気のせいかなって思っていたんですけど、外出する度に何となく気配 ...

何気ない話の流れで蒼さんからの告白を断った形になった。私の気持ちを知った蒼さんは散々悪態をつきながらも最後には「好きな女の幸せを望むのがデキる男の本懐なんだろうな」と云ってくれた。ただ去り際に蒼さんから云われた言葉が気になった。「だけどおまえ、ただ好きっ ...

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