AriaLien

*HANAHA Novel & Life BLOG*

カテゴリ: ◆蒼い樹が薫る

私が住んでいるのは物凄い田舎だ。四方八方を山に囲まれていて、バスは二時間に1本あるかないか。幼稚園はなく、小学校と中学校、そして高校が其々1校ずつ。当然人口が少ないから学校ではみんなが顔見知り。──という感じの狭い環境で私は13年間生きて来た「えっ、いっちゃ ...

初恋を諦めてから私は恋とは無縁な日々を過ごす事になった。中学の時は友だちと其れなりに面白可笑しく過ごした。高校生になってからは友だちは大抵彼氏が出来て、女同士で遊ぶよりも彼氏を優先させる事が多くなった。こんな私なんかでも何度か告白をされた事があったけれど ...

(いっちゃんから連絡が──)あまりにも驚き過ぎて私は其の場で立ち尽くしてしまった。五年前、芸能人になるのだと町を出て行ったいっちゃんとは音信不通になってしまっていた。いっちゃんの家には一度だけ連絡があって、映画のオーデションには落ちたけれどとある芸能事務 ...

誰もいない自宅に戻り、逸る気持ちを押さえながら私は携帯を取り出して渡された紙に書かれていた番号にかけてみた。プルルルル プルルルル無機質な呼び出し音が数秒流れ、そしてカチッと音が変わった。「あっ!あのっ」『留守番電話サービスに接続します。ピーッという発信音 ...

いっちゃんから訊いた話はこうだった。五年前、映画の新人俳優発掘オーディションの最終選考に落ちたいっちゃんは、其処でスカウトされたある芸能事務所に所属する事になった。雑務をこなしながらいくつかのオーディションを受けたけれどどれもダメで、結局一年程で其の事務所 ...

「ひゃぁぁぁぁ~」バスと電車、そして新幹線を乗り継いでやって来た大都会。着いた早々、私の第一声は其れだった。降り立った駅構内は何かのお祭りがあるのだろうか?と思わせる様な人の多さだった。(噂には聞いていたけれど…これほどのものとは!)今まで育って来た場所 ...

急に私の前に現れた男の人は、姿形だけ見ればまるで(お、王子様?!)と思ってしまう程にカッコいい人だった。「あのさ…其処、汚いと思うよ」「え?」やっと笑うのを止めた男の人が急に声のトーンを落として囁くように云った。「地面に直接座るの、君の常識?」「…」其処 ...

「わぁ、わぁ…わぁぁぁぁ~」「…もう少しボリューム下げてね」「あっ、すみません」「…」静かに窘められてもどうしたって感嘆の声しか出ない。だって今、私の目の前にはとても美味しそうな料理が置かれているのだから!「食べても…いいのでしょうか?」「どうぞ」「いた ...

すっかりお腹が満たされた私は、陽が暮れかかった街中を灰嶋さんと歩いていた。足の長い彼はお店に行く前は随分自分ペースで歩いていたけれど、今は足の短い私に合わせて歩いてくれているような歩調をしていた。(気を使ってくれているのかな)決して口に出して云われないけ ...

「遅いって…まだ19時前」「オレにとっては充分遅い時間なんだよ!」「…」恐る恐る部屋の奥へと進むと、其処には薫さんより小柄な女の子が顔に青筋を立てて怒鳴っていた。(えっ!お、女の子?!)声だけ聞いたらまるっきり男なのに、其の声の主は何処からどう見てもボーイ ...

「10分以内に食事を作れ!」と云われて無我夢中で作った。予定の10分は少し過ぎてしまって、あの小さな女の子──もとい、男の子に怒鳴られてしまったけれど。「…まぁまぁ、だな」「へ?」「なんだよ」「あ…いえ、ありがとうございます」「まぁまぁだって云ってんだ。調子 ...

結局云われるがままお風呂掃除をして、ピカピカになった湯船を見て蒼さんはやっと大人しくなった。「はぁ~」すっかり疲れ果てた私は豪華なソファに倒れ込むように座った。「…ご苦労様」「あぅ~疲れたぁ~」薫さんが労いの言葉を掛けてくれるのは嬉しかったけれど、でもど ...

「いっちゃん、いっちゃん!逢いたかったよぉぉ」「…涙花」いっちゃんは「心配かけてごめんな」と云いながら私をギュッと抱きしめてくれた。(あぁ…変わっていない、いっちゃん)姿形は私が知っていた頃のものじゃなくなっていたけれど、でも雰囲気とか優しさとか…そうい ...

上京してからこの時間まで、私の身に何が起こったのかよく解らなかった。だけどいっちゃんから訊いた話で其の流れの意味がやっと解ったのだ。──訊いた話はこうだ五年前受けた映画のオーディションに落ちたいっちゃんは其処で声を掛けて来た人の事務所で芸能人デビューを目 ...

「つまり私は…家政婦、として雇われたって事?」いっちゃんの話を訊いて結論付けられたのはそういう事だった。男の人が三人住むこの会社事務所兼住居の生活を支える家政婦になって欲しいと──(そういう事…だったのか)やっと今まで蒼さんや薫さんが云っていた『家政婦』 ...

ピピピピピピピッ「ん…」耳元で鳴り響く携帯のアラームを手探りで止めた。(…はっ!)一気に目が覚めてガバッと布団から起き上がった。「…」薄暗い視界に入るのは何もないガランとした空間。──いや、何もない、というのは変か6畳ほどの部屋にはとりあえずベッドと備え付 ...

「飯っ!!」部屋に響いた轟音と共に聞こえたのは、これまた大きな声。「あ、蒼さん…」「おい家政婦、オレの名前を気易く呼ぶんじゃねぇ!飯だ、サッサと飯を出せっ!!」「は、はいっ!」小さな巨人である蒼さんは昨夜同様、苛立った様子を存分に見せつけドカッとソファに ...

慌ただしく朝食を済ませた蒼さんはサッサと自室に引きこもってしまった。「…」「あぁ、蒼さんの事は気にしなくていいよ」「え?どういう事」「あの人は部屋で仕事をしているんだ。だからきちんと食事の支度だけ欠かさなければ酷い目には遭わないよ」「酷い目って」「ただし ...

「…え、買い物する処?」「はい。近くで何処かないですか?」薫さんが黙々と朝食を食べているのを眺めながら私は尋ねた。「…買物…近くに百貨店があるけど」「百貨店?」「デパ地下。確か食料品売り場だった気がしたけど」「えーっと…そういう処じゃなくてもっとこうスー ...

約一時間程の食事を終え、薫さんは着替えて来るから待っててと云ってリビングを後にした。軽く身支度をした私がソファに座って薫さんが来るのを待っていると、部屋から出て来た蒼さんと目が合った。「あ」「…」何と云ったらいいのか解らず、何となく私は蒼さんから視線を外 ...

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