「子どもが消えただぁ?」
「そうなんですよ!忽然と、綺麗さっぱりと!」
「なんか其の表現、おかしくないか?」
「おかしいかも知れませんけど、思わずそう云いたくなるほどに見事に消えたんですよ」


お昼過ぎ。

外出先から帰って来た大家さんとふたりでお弁当を食べながらつい一時間前にあった出来事を話していた。

大家さんは時折私の話にツッコミを入れながらも真剣に訊いてくれて、そしてお弁当を食べ終えた頃、こう云った。

「其れは座敷童だな」
「……は?ざしきわらし…?」
「あぁ、訊いた事あるだろう?家に棲みつく妖怪の一種」
「訊いた事ありますけど…確か座敷童っていい妖怪、でしたよね?」
「だな。見ると幸せになれるっていう」
「そんな妖怪がこの家に棲みつくんですか?悪霊だらけのこの家に?」
「おぉ、云うようになったな吉国」
「其れに座敷童って女の子じゃないんですか?」
「まぁ、一般的にはそう云われているな」
「じゃあ座敷童じゃないんじゃないですか」
「かもな。どうせ近所の餓鬼が庭に忍び込んで遊んでいただけだろう。そう思え」
「…だから最初は私もそう思ったんですけど…其れにしては不思議な事が多くて…」
「此処に住んでいる以上、不思議な事はこれからも沢山起きると思うぞ」
「…」

大家さんはお茶を啜りながら事無げに云う。

「なにしろバケモノ屋敷だからな、此処は。そんなちいさなことを気にしていたら住んでいられない」
「其れは理解しているつもり…なんですけど」

仮にあのはゆくんなる子どもが霊だったりした場合、そういう心霊体験を初めてしたという事になる。

「どうした、怖くなったか」
「…いえ、なんか…大丈夫です」
「は?」
「もしもあの子が生きている人間じゃなくて、霊とか妖怪の類だったりしたのなら…私、意外と大丈夫かもって」
「…」
「一緒にいて全然怖くなかったんですよ。というか寧ろ意外なほどほのぼのしてしまって…不思議だなとは思いましたけど、霊か妖怪だったと思えば其れは其れで色々納得出来るので」
「…おまえ…本当に稀有だな」
「え?」
「──いや、なんでもない。じゃあ其の件はこれで終わりでいいのか」
「はい。また遊びに来たら一緒にお茶を飲みたいと思います」
「…さよけ」

大家さんに話を訊いてもらったら妙にスッキリしてしまった。

此処に住む以上、今までに経験した事の無い出来事が起こるのかも──なんて考えると、不謹慎だけど少しだけ心が躍ったのだった。


「んじゃ、俺、出かけて来る」
「あ、はい──というか大家さん」
「ん?」
「いつも何処に行っているんですか?」
「なんだ、気になるのか」
「少しだけ。仕事ですか?」
「まぁ、そんなようなもの。少ないけどたまに依頼があるんだよ、お祓い関係の事案が」
「あぁ、やっぱりそうなんですね。此処の大家業だけじゃ生活厳しそうですもんね」
「まぁな。あんまり力使うような仕事したくないんだけどな。俺、虚弱体質だから」
「そうなんですか?じゃあ尚更無理しないでくださいね」
「…」
「もし本当に厳しいなら此処の家賃…もう少し上げてもいいですから」
「は」
「あ…えっと…いきなりドンッと上げられると困りますけど…あの、要相談という事で…」
「…は、あっははははははっ」
「!」

(なんかこのパターン…いつかの時と似ているような)

突然笑い出した大家さんに色々回想を馳せながら黙っていると

「おまえ…本当面白い奴だな」
「面白い、ですか?」
「あぁ、益々気に入った」

そう云いながら大家さんの大きな掌がポンポンと私の頭を撫でた。

(うわっ)

其れはまるで今朝、晴幸さんからされたようなものと同じで、やっぱり大家さんからのポンポンにもドキッと胸が高鳴ってしまったのだった。

タタリ荘のモノノケ
★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチずついただけると執筆の糧になります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村


☆スマホでお読みの方は是非♪