突然泣き出した私にワタワタした男性は「本当にすまない!」と謝って慌ててコーヒー代をテーブルに置いて店から出て行ってしまった。 



(うぅ~失敗しちゃった…)

テーブルの後片付けをしながら見ず知らずの人に醜態を晒してしまった事を反省していると


カラン♪

「こんちわー」
「こんにちは」

「!」

『いらっしゃいませ』を云う前にドカドカと店に入って来た人たちにビックリした。

「おぉ、本当かっわいい子だ!」
「おい、不躾にそういう事云わない」
「…あ、あの…」

金髪でピアスをしているガタイのいい人を眼鏡をかけたスーツ姿の人が窘めていた。

突然の来訪に呆気に取られているとふたりはカウンター席に座り、金髪ピアスの男性が「注文注文」と催促した。

(! お、お客さんっ)

私は気を取り直して慌ててカウンター内に入り改めてふたりに向き合った。

「すみません、ボーッとしちゃって…あの、ご注文は」
「おれアメリカン」
「僕はほうじ茶ラテをください」
「はい、少々お待ちください」

注文を受け、其の支度をしていると

「ねぇ、あんた十喜代ばあちゃんの孫なんだって?」
「え、あ、はい」
「名前…えっとなんだっけ、先刻松ばぁから訊いたのになぁー」
「みのりさん、ですよね」

うんうん唸りながら名前を思い出そうとしている金髪ピアスの男性を余所に、眼鏡スーツの男性がサラッと云った。

「はい、奥平 美野里です」
「おくひら?桧山じゃねぇの?十喜代ばあちゃんの孫なのに」
「私は母方の孫なので…祖母とは苗字が違うんです」
「そうなのか、へぇーみのりちゃんね」

(う~ん…ちゃん付け、久しぶりに聞いたな)

なんだか金髪ピアスの男性は初見の怖そうなイメージから人懐っこいやんちゃ者というイメージに変わった。

一方で

「こら、初対面でいきなりちゃん付けは失礼だろう──すみません、不作法者で」
「いえ、お好きに呼んでくださって結構ですよ」

(ははっ、こっちはまんまイメージ変わらず)

眼鏡スーツの男性は初めからのイメージ通り、真面目な人という印象が続いた。

「おれね、北原 修吾(キタハラ シュウゴ)路線バスの運転手やってる28歳」

(ん?)

「僕は南 憲二郎(ミナミ ケンジロウ)です。役場に勤めています。今年29になります」

(んん?)

ふたりの男性の自己紹介を訊いてなんだかピピンと来るものがあった。

(路線バス運転手の北原さんと役場の南さんって…)


『ほうだな。あれ、あそこの…役場勤めの南さん処の息子がえぇ歳じゃなかったかいな』
『いやいや、路線バスの運転手の北原くんがなぁ』


(先刻お客さんが話していた人か)

私の結婚相手を勝手に探してあれこれ云っていた件(クダン)の人物がこのふたりだと気が付いた。

(確かに年齢的にはいい感じなんだろうけれど)

勿論知り合って早々、そういう事を考えられる相手ではない。

私にとっては祖母の知り合いの歳若い人──という印象でしかなかった。


「ねぇねぇ、美野里ちゃんは何処に住んでいたの?」
「東京です」
「へぇ、都会に住んでいたのになんでまたこんな田舎に来たの」
「…えっと…祖母が住んでいたこの町が好きで…いつか住めたらいいなと思っていて」
「えぇっ、こんななーんにもない町が好きなの?!おかしい子なの?美野里ちゃん」
「おかしい、ですか?」
「おかしいよ、普通は東京に居てる方がいいじゃん」
「こら、修吾、言葉が過ぎるぞ」
「だって普通そうじゃねぇ?憲ちゃんもそう思うべ」
「いや、其れは人其々の見解で」
「じゃあどうして北原さんは東京に行かないんですか?」
「へ?」

やいやい云い合っていた北原さんと南さんが私を見た。

「東京が…都会に住む事がいいならどうして北原さんは此処に住んで就職しているんですか?」
「お、おれはぁ…なんつーか東京は肌に合わないっていうか…」
「修吾は夢破れて出戻って来た口だからね」
「ちょ、憲ちゃん、そんなみっともない事云うなって!」
「夢破れて?」
「~~~よくある話だよ。バンドマン目指して上京したけど芽が出なくて、そんで都会の目まぐるしい生活に疲れちまっておかしくなって…」
「外に出て改めて故郷の良さを知ったって事なんですね」
「おれはな、そうだけどあんたは違うじゃん。元々東京モンだろ?だからおかしいって」
「…私も色々あって…疲れちゃったので此処に逃げて来たんです」
「…」
「…」

つい本音を覗かせる様な言葉を発してしまい、一瞬場の雰囲気を気まずくしてしまったと思った。

「あ、あの、そんなに暗い理由ではなくてですね──」
「…君も先生と同じなんだね」
「え」

南さんが何かを云った様な気がしたけれどとてもちいさな声だったので訊き取る事が出来ず首を傾げた私だった。

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