両親によって身の回りに婿候補が置かれていた事など全く気が付かないアメリアは今までと何ら変わり映えのない日々を過ごしていた。


「え、勉強しかしていないの?!」
「…そうですけど」

其の日初めて道徳の勉強時間を迎えた。

先生として私の目の前には従兄妹のイグナーツが座っていた。

「勉強をしていない他の時間は何しているの?」
「あの、其の質問は道徳に関係あるものなんですか」
「あるよ、あるから訊いているんだよ。はい、答えて」
「…」

イグナーツの授業内容は始めから私の事を根掘り葉掘り訊く事だった。

一日の過ごし方はどうだとか、好きな食べ物や物はなんだとか、旅行に行って愉しかった処は何処だとか──そんなどうでもいい事ばかりを訊いていた。

「ははぁん──アメリア、君は…超ド級の箱入り姫過ぎる!」
「…は?」

(何を突然)

訊かれた事を一通り答えると突然あまり嬉しくない言葉を投げ掛けられた。

「ダメだよ、全然ダメ!君は感受性が今にも底につきそうなほどに低過ぎる!」
「…」
「もっと外に出なくてはいけないよ。今の君は城の中、もしくは限られた城の敷地内の狭い世界しか知らないだろう」
「其れでいいではありませんか。王は城で国政の舵取りをするものです。王に外の様子を伝え訊かせる為に外務大臣や国務大臣がいるのでしょう?」
「え」
「そもそも国王は身の安全面を考慮して出来るだけ城外には出ない方が良しとされているのです」
「──其れ、本気で云っているのかい?」
「な…なんですか、何か間違っていますか」

急に真顔で低く云われた。

其の雰囲気に一瞬怯んでしまった。

しかし、私が云った事は世継ぎとしてはごく当たり前の心構えではないのだろうか?

(イグナーツも王子なのだから解っている事でしょう?)

当たり前の事を遠回しに小馬鹿にされた気がして少しずつ腹が立って来た。

(やっぱりこの人苦手。全然王子らしくなくて)

何故こんな人が先生だなんて肩書きを得ているのか不思議で堪らなかった。

「……はぁ~~よし、解った」
「え」
「君が学ぶべき最初の授業は──社会見学だ!」
「…は?」

其の時イグナーツが何を云ったのか、私は全く訳が解らなかった。

Schwarz Mythos
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