「そう、揃ったのですね」
「あぁ、なんとかな」

早春の頃のとある夜、バルダーニとメナムは相変わらず仲睦まじい夜を過ごしていた。

「でも…本当にイグナーツを候補に加えてよかったのですか?」
「なんだ、君の甥だぞ。もっと自信をもって薦めてくれないのか」
「いえ…いい子ではあると思います。ただ今現在の素行の良し悪しはわたしには解らなくて」
「彼は家柄、血筋、どれを取っても3人の中では一番いいと云っていいだろう。ただ年齢が離れ過ぎている点がネックになったがアメリアが歳の割には大人びいてるからな、其処はあまり問題ではないと思った」
「まぁ、イグナーツに今回の件を打診した時に即決した意気込みはよかったんですけれどね」
「彼自身、アメリアに対して少なからずそういう対象で見てくれるというのが幸いしたな」
「…そうですわね」

10歳年下の娘相手にイグナーツが何処までの好意を持ってくれるのかは解らない。

でも其れは他の婿候補にもいえた事だった。

バルダーニとメナムはアメリアの婿候補をヴォーリア国第3王子・イグナーツとデュシス国第2王子・ザシャル、そしてノーティア国外務大臣の長男・フェルディナントの3人に決めた。

其々20歳、18歳、10歳と年齢も出身国もバラバラだったが、アメリアが誰を選んでも女王の夫として遜色のない相手だった。


「これからアメリアが誰を選んでいくのか愉しみでもあり、少々…」
「父親としては複雑ですわね」

クスクスと笑うメナムの微笑みに落ち込んだバルダーニの心は少し晴れた。

「いや、でもアメリアにも味わって欲しいのだ。真に愛する者と過ごす日々の幸福感を」
「…あなた」
「おれが君と出逢って知ったこの気持ちをアメリアにも──そう思えば何という事もない」
「そうですか」
「其れにおれには君がいるしな。寂しくはないぞ」
「まぁ…ふふっ」

メナムの掌が優しくバルダーニの頬をそっと撫で上げる。

「メナム」

愛おしい妃の名前を呼ぶだけでもバルダーニは心が安らいだ。


歴代の王たちは例え正妃に世継ぎを産ませてもこぞって側室を迎えていた。

ただし王位継承権を巡る無用な争いを避けるために万が一側室が男子を産んだ場合、其の子は遠い異国へ養子に出されていた。

己がノーティア国王の落胤だと悟られぬよう、巧妙に王家から遠ざけられていたのだ。

バルダーニの父、先代の第17代国王も正妃との間にバルダーニが産まれたにも拘らず数名の側室を持った。

どの側室にも男子や女子が生まれたが、国王が正妃と側室の線引きを厳しく引いていた事と正妃と側室たちの仲が良かったという点に於いて其の時生まれた子どもたちは幸いにも異国へ里子に出される事はなかった。

Schwarz Mythos
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