表向きは騎士見習いとして、しかし其の裏の事情はアメリアの婿候補としてフェルディナントが城に住み込むようになってから一週間。

10歳同士のフェルディナントとアメリアの関係がそう簡単に変わる訳でもなく今までと何ら変わりのない日々が過ぎて行った。



そんなある日──


「姫様、今日からお勉強時間の科目と先生が増えます」
「…え」

いつも通りジョバン教授との勉強の時間が始まった。

と思ったら開口一番に発せられた教授の言葉に私は少しだけ首を傾げた。

「姫様には帝王学以外の学問にも力を入れていただきたいと思いまして、其々の科目を教えていただける先生を2名、ご用意いたしました」
「…其々の科目とは?」
「道徳と歴史でございます」

(道徳と歴史?)

「先生、其れは国王となるために必要な勉強なのですか?」
「勿論ですぞ、姫様。学問に不要などという科目は何ひとつありません」
「…」
「特に道徳と歴史は大切な科目です。豊かな心を育てるための道徳とこの世界の成り立ちを知る事が出来る歴史は国王になるためには必要不可欠な科目と云えましょう」
「…そうですか、では帝王学と同様、学んでいきたいと思います」
「流石姫様。学習意欲旺盛な其の姿勢、天晴ですぞ」
「…」

何故急に科目が増えたのかは解らなかったけれど、将来国王として人々の代表となる身であるからには必要だと思われるものは全て吸収したいと純粋に思った。

「ではおふたりの先生をご紹介致しましょう」

そう云って教授はパンパンッと手を叩いた。

すると部屋の扉が開いてふたりの男性が中に入って来た。

(えっ)

ふたりの男性の内、ひとりを見た瞬間思わずガタッと音を立てた椅子から立ち上がってしまった。

「やぁ、久しぶりだね、アメリア」
「イグナーツ?どうして…」

イグナーツはお母様の兄上である現ヴォーリア国王の息子だ。

つまり私の10歳上の従兄妹だ。

「どうして、か。確かにどうしてだろうね」
「…」

最後にイグナーツと逢ったのは2年前だった。

其の時も思ったけれど相変わらず飄々としていて掴み処のない印象が強い。

「まぁ、ちょっとした訳があって僕が君に道徳を教える事になったんだよ」
「…イグナーツって人に道徳を教える事が出来るの?」
「酷いなぁ、これでも一応大学院を飛び級して卒業したデキる男だよ」
「自分で出来ると云うなんて厚顔無恥も甚だしいわ」
「まぁまぁ、そういう事だから安心して僕に教わりなさいよ」
「…」

胡散臭いにこやかな笑顔を私に向けるイグナーツの印象は、2年経った今でもあまり変わっていない様に見えた。

Schwarz Mythos
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