「──博愛主義者?」
「えぇ、アメリアはわたしたちの事を含めて全ての人を等しく平等に愛しているんですって」
「…」

夜になり、いつものようにメナムとの心休まるひと時を過ごしているとメナムはクスクス笑いながらそう告げた。


「わたし、其れを訊いて少しだけ安心しました。あぁ、あの子はまだまだ子どもなんだな、と」
「…」
「大人びいて見えるけれど、まだ愛とか恋とかには疎くて未熟なんだなと」
「…」
「これから心身が成長すると共にそういった甘い気持ちも育ってくれるといいですね」
「……あぁ…そう、だな」

一点の曇りもない無邪気なメナムの言葉にゾッとしている己がいた。


(そうだ──忘れていた)

余りにも幸せな日々を送っていたからすっかり忘れてしまっていた。


──あの夢の約束を


『今の私は体も国をも持たぬただの流浪の民。私が与える子どもがもし女ならば其の姫を私が戴く』

『ノーティア国の姫を私のものに──そして私はいずれノーティア国の王の座に就く』


(あれは…あの契約は継続中、なのか?)


得体の知れない夢の住人と交わした取引き。

其れはいつになったら執行するのか詳しい事は何も解らない。

ただ


『では数十年の後、報酬を受け取りに伺うまでしばし待つがいい』


(数十年後──と云っていた)

其の時は男が生まれるとも女が生まれるとも解らない状態だった故、安易に契約を交わしてしまったけれど…


(いや、愛しい我が娘を訳の解らぬ者に奪われてたまるか!)

貿易国家であるノーティア国王であるからには交わした契約の重要性は十分に心得ているはずだった。

約束を違(タガ)える事など、あってはならない事だ。

──しかし

(この契約の代償はあまりにも理不尽だ!)

娘可愛さの前では己はただの嘘つき商人になってもいいと思ってしまった。


「…? あなた、どうなさったの」
「──あ」

メナムを組み敷いたままで固まってしまっていた。

其れを心配そうに見つめるメナムからそっと身を引いた。

「あなた?」
「…メナム…おれは…アメリアに婿を取らせる」
「え」
「早ければ早い方がいい。おれが見繕う男の中のひとりを婿として迎える」
「ちょ、ちょっと待ってください。其れは今ですか?今の…10歳のあの子にあてがうという事ですか?」
「そうだ」
「そんな…まだ早過ぎます」
「いや、遅過ぎるのだ!」
「!」

思わず怒鳴る形でメナムに云い放ってしまいハッとした。

Schwarz Mythos
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