「ふふっ、アメリア。お母様、見ちゃったわよ」
「…?」

毎日恒例のお母様との昼下がりのティータイムにて、にこやかな笑みを浮かべながら突然そう云われた。

「先刻、フェルディナントと愉しく遊んでいたでしょう」
「…遊ぶ?」
「えぇ、中庭の花壇の処で。遊んでいたんでしょう?」
「あれは遊んでいたんじゃありません。ミミズについての知識を与えられていたんです」
「え?ミ、ミミズ?知識?」

私は先程の出来事をかいつまんでお母様に話した。

其れを訊いたお母様はフェルの事を大層褒めて感心した。

其の一方で

「う~ん…遊んでいた訳じゃなかったの…其れは残念」
「…」

(残念?)

お母様は何を残念がっているのだろうか。

「ねぇ、アメリア」
「はい」
「アメリアは…フェルディナントの事をどう思っているの?」
「思っている、とは」
「好き?嫌い?」
「…」

お母様は時々、一瞬私が答えに迷う質問をして来る時があった。

「どう?好き?」
「…好きか嫌いかで問われれば好きと答えます」
「まぁ!」
「そもそも私に嫌いな人はいません」
「…え?」
「私はお父様もお母様も、フェルディナントもジョバン教授も城で働く全ての人々、そしてこのノーティア国に住まう人々の事を等しく好いています」
「…あ~そ、其れは…」
「?」

何故かお母様の顔色が優れなくなった。

「…そう、アメリアは博愛主義者なのね」
「人は皆、そうではありませんの?」
「んー確かに其れはとても素敵な事だと思うわ。全ての人は等しく平等に愛される権利を持っているんですもの」
「其の通りです」
「でもね、アメリア」
「はい」

不意にお母様の顔が真剣になり、そしてとても柔らかい微笑みを湛えながら囁く様に云った。

「等しく愛する人の中にはたったひとり、特別に愛し愛される人が存在するの」
「…」
「アメリアの前にもきっとアメリアだけのたったひとりが現れて、そして其の人には特別な愛を交わし合うのよ」
「…」
「お母様にとって其れはお父様だったわ」
「…」
「いつかアメリアにもそういう人と幸せになってくれればいいなと思うの」
「…」


たったひとり


特別に愛し愛される存在


(…其れってどういう事?)

私はお母様が熱弁した言葉の意味が半分も解らないでいたのだった。

Schwarz Mythos
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