昔々。


──といっても現代に通じる時代のとある世界のとある国のお話



とある世界の名前をメガロティアといい、とある国の名前をノーティアといった。

メガロティアの南に位置するこのノーティア国は絶対君主主義国家で現在国の頂点に立つ国王は初代健国王から数えて18代目にあたる。

四方を海に囲まれている地形から貿易業が盛んな商業国家であり、国王が住まう城の周りには自国他国問わず商売をする民衆が集まり居を構え繁栄を極めていた。


そんなノーティア国第18代国王・バルダーニの目下の悩みというのが愛してやまない妃・メナムとの間に子どもが出来ない事だった。

婚礼から既に8年の歳月が経っていた。

宰相や大臣ら周りの人間から側室を持つ事を進められるが其れをバルダーニは頑なに拒んだ。

しかし更に2年の月日が流れ、とうとう妃からも側室を持って欲しいと泣く泣く懇願されるまでになった。

妃を愛する余り側室を持つ事に嫌悪感を露わにしていたバルダーニは悩んだ。

妃の事が愛おしい。

妃以外の女と子どもを設ける為だけに懇ろになるのは気が進まない。

しかしこのまま子どもに恵まれなければこれから先も世継ぎ問題に頭を悩ませる事になる。


一体どうすればいいのか──


今の彼にとって国の政務よりも側室問題が最も頭を悩ませる事項だった。


そんな悩み多きの日々の中、いつも通り妃との甘く濃厚なひと時を過ごしぐっすりと眠っていたバルダーニは夢を見た。






『王よ、ノーティア国王バルダーニよ』


真っ暗闇の中、ぼんやりと浮かぶ白く丸い光から声が聞こえた。


『バルダーニ王よ。子どもが欲しいか』


姿の見えぬ者の問い掛けを不思議に思いつつも応える。


『あぁ、欲しい。メナムとの間に子どもが欲しい』
『ならば私が子どもを授けてやろう』
『そなたは何者だ。何故姿を見せぬ』
『其れは私が未だ実体を持たぬ身ゆえ。私が形を成すにはまだ時期ではない』
『よく解らぬ理屈だが子どもを授けるとは一体どのような事だ』
『方法を知る必要はない。ただ欲しいのかどうか問うている』
『…欲しい。欲しいに決まっている』
『そうか、ならば私が授けてやろう』
『何を簡単に』
『私には出来るのだ──まぁ信じるか否かは王次第だが』
『──其の見返りにそなたは何を望む』
『ふっ…流石貿易国家であるノーティア国の王。取引の何たるかを心得ている』
『御託はよい。何を望むのだ』
『ノーティア国王の座』
『!』
『今の私は体も国をも持たぬただの流浪の民。私が与える子どもがもし女ならば其の姫を私が戴く』
『なっ』
『ノーティア国の姫を私のものに──そして私はいずれノーティア国の王の座に就く』
『……もし…男ならば』
『其の時はノーティア国の北部に残る広大な未開の針葉樹の森を頂く』
『スヴォルの森──か』
『そうだ。あそこに私の居場所を作る』
『居場所…』
『どうだ、ノーティア国の王よ。私との取引──受けるか否か』
『……解った、受けよう』
『其の言葉、嘘偽りないな』
『ない。子を授けてくれるのならば…メナムとの子を与えてくれるというのならそなたの望み、必ず叶えよう』
『──契約成立だ。今この時より私とノーティア国の王との絆は固く結ばれた──では数十年の後、私が報酬を受け取りに伺うまでしばし待つがいい』
『っ!』


仄かに灯っていた白い光が周りの漆黒の闇に吸い込まれる様に消えると同時に聞こえていた声もなくなった。




そして夢は其処で終わった──



Schwarz Mythos
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