──遥か遠い昔、其の地には何もなかった




規則もルールも統率も縛りも

何もなかった。

ただ人間同士が本能のままに無秩序に生きていた。



そんな地にある日突然現れたものが世界を一変させる。


其れを見た者は口々に云った。


『黒いものが降り立った』

『闇がこの世界を覆いつくす』


其の巨大な漆黒の塊はやがて人と同じ形を成した。

漆黒の髪に漆黒の濡れた瞳。

其の造形は見た者を瞬く間に虜にして行った。


男たちは其の者の為に働き生活の全てを支えるために尽くした。

女たちは其の者に抱かれ次々に子どもを孕み産み落として行った。


そうして其の地はあっという間に漆黒の者を神として崇め称え、ひとつの巨大な世界として繁栄していった。

 

やがて其の世界はメガロティアという名前で呼ばれるようになり、東西南北に其々タイプが異なる人々が集い大きな国がひとつずつ出来上がって行った。

其々の国の王となった者たちは共に漆黒の者の血を引く純潔の末裔だった。


しかし永い月日と共に知恵と力をつけた王たちの中には漆黒の者の存在を忘れ、己こそが神だと慢心する者たちが多く出現し、互いを牽制し合うかのように争いを繰り広げて行くようになった。


一部の愚かな王の為に犠牲になる民を哀れみ、既に神化していた漆黒の者はとうとう怒りを爆発させメガロティアを滅ぼそうとした。

世界は暗闇に覆われ、何も見えなくなってしまった。

数千年という時をかけて築き上げて来た文明はたった数日で滅びるかと思われた。


しかし正しくも間違った裁きを下そうとしていた漆黒の者の行為を止めようと其の地に降臨した者がいた。

眩いばかりの光を纏い、闇をも蔽い尽す程の光に人々が目を開けられなかった数日間。

気が付くと世界は何事もなかった様に静まり返っていた。


其れっきり


もう誰も漆黒の者の姿を見る事も声を聞く事も出来なかった。


そんな世界の静寂から更に月日は永く経った。

且つて神として崇め奉られていた漆黒の者はいつからか世界を崩壊させようとした邪神として恐れられるようになっていた。

世界の始まりを知らない者にとって、漆黒の者は其の名を口に出す事さえ忌み嫌い、恐怖の対象となり果ててしまっていたのだった。




──そしてこれより物語は始まる──




Schwarz Mythos
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