「わぁ、この煮物、美味しいですね」
「そう云ってもらえると嬉しいわ~どんどん食べてね」
「遠慮なく頂きます」 

蘭さんの家で思わぬ食事会になった。

振る舞われる料理がどれもこれも美味しくてつい箸が進んでしまう。

(流石スナックを経営しているだけあるなぁ)

蘭さんはお店でお酒だけではなく、手作りのお惣菜やおつまみを出していた。

お店には一度しか行っていなかったけれど、其の時食べたものがとても美味しくて、お酒を飲まなくても其れ目当てで通いたいと思ったのを思い出した。

「ふふっ、やっぱり手料理を食べてくれる人がいるっていいわねぇ」
「あ、其れは私も思います」
「美野里ちゃんもお料理上手そうだもんね」
「いえ…私は…どうなんだろう」
「お店でも食事出していなかったっけ?」
「ごく簡単なものしか出していません。一応料理学校に通った事はありますけど」
「あら、じゃあ完璧じゃない。今度ご馳走してね」
「蘭さん程上手くないから恥ずかしいです」
「何を云っているのよ、料理は心よ心。食べさせたいという気持ちと愛情を込めて作ったものはなんでも美味しいのよ」
「…蘭さん」

本当に不思議な人だなと思う。

蘭さんと話していると気心の知れたお姉さんという感じで安心して何でも話せてしまう気がした。

(そういえば)

「ん?どうしたの」

私が蘭さんの顔をジッと見ている事に気が付きそう云った蘭さんに

「あの…蘭さんっていくつなんですか?」

なんて気軽に訊いてしまった。

「───美野里ちゃん」
「っ!」

にこやかな表情は其のままに、だけど急に低くなった声にドキッとする。

「気易く女の子に年齢を訊いちゃダメよ~」

(女の子?!)

「というかいくつだっていいじゃない?女はハタチ越えたら気持ちや見た目若ければずっとハタチのままなんだから」
「…はぁ」

(えぇ…其れってどういう理屈?全然解らないよ)

どうやら蘭さんは年齢を隠しておきたいタイプの人らしい。

「ちなみに人生経験や気持ちの上では美野里ちゃんよりもちょいお姉さんだから、本当の姉の様に慕ってくれていいのよ」
「…解りました」

にこやかにそう応えるけれど、妙な迫力が其処彼処にあって私は本能で(蘭さんの云う事に逆らってはいけない)と悟った。

そんな他愛無い話をしている内に愉しい食事時間は過ぎ、食後に出されたお茶を飲みながら談笑している内にようやく私は蘭さんに此処に来た本来の目的を話す事が出来た。

「あの、蘭さん。つかぬ事を訊きますけど」
「なぁに?」
「蘭さんって東藤さんの小説を読んだ事がありますか?」
「へ?先生の小説?」
「はい、東藤さんって小説家なんですよね。どんな小説を書いているか是非読んでみたいと思って東藤さんに訊いてみたんですけど教えてくれなくて」
「あら、そうなの?」
「知っている人に読まれるのが厭なのかなとか思いつつも、気になってしまってずっとパソコンで調べているんですけど埒が明かなくて」
「あぁ、先生、小説を書く時ペンネームを使っているからね。本名じゃ検索しても出てこないわよ」
「やっぱりペンネームなんですね。そうじゃないかなと思ったんですよ」

なんだか蘭さんからは情報が訊き出せそうな気がして心が躍った。

「んー先生の小説、知っているけど…先生が教えないって事は美野里ちゃんには読んで欲しくないんじゃないかしら」
「どうしてですか?どうして私だけ…だって北原さんも南さんも知っている感じだったし、蘭さんだって」
「……まぁ、其れもそうね。美野里ちゃんだけ知らないなんて不公平よね」
「! ですよね」

(これはもしかして…教えてくれる感じ?!)

この話の流れは良い方向だと密かに期待した私だった。

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