イグナーツの追及にどうしたらいいのか困っていると 

「アメリア!」
「!」

暗闇から聞こえた声にドキッとする。

イグナーツも其の声に気が付き、迫っていた私から少し距離を取った。

「アメリア──と…イグナーツ?」

「…フェルディナント」

姿を現したのはフェルだった。

其れを見たイグナーツはフェルの名前を呟いた。

(フェル…私を追いかけて来たの?)

医務室に行くと云った私を心配してか、騎士としての義務感からか解らないけれど、どうやら私を探してくれたようだとフェルの額から流れ落ちた汗を見てそう思った。

そんなフェルにイグナーツは冷たい視線を向けた。

「どうして君が此処にいるんだい」
「…は?其れは俺の台詞だ。なんであんたが此処にいてアメリアに──」
「アメリアに、何」
「…よくない事をしていただろう」
「よくない事?其れはどんな事だい」
「…」

(何…これ)

イグナーツとフェルディナント。

いつもは兄と弟のように仲がいいふたりが、今は何故か今まで見た事がないほどの剣呑な雰囲気に包まれている。

「ねぇ、フェルディナント、君は知っているかい?」
「何を」
「アメリアの首にキスマークをつけた相手を」
「!」

其の瞬間、フェルは私の顔を凝視した。

(あ…)

折角虫刺されだと誤魔化した嘘がバレてしまったと、私は内心イグナーツに対して見当違いな憤りを感じた。

(なんでフェルに云うのよ!)

そんな事を考えて戸惑っている私の耳に入ったのはフェルの意外な言葉だった。

「…俺だ」
「え」
「其れを付けたのは──俺だ」

(フェル?!)

「へぇ…君だったのか」
「もういいだろう、アメリア、先刻の事に対しての云い訳をさせてくれ」
「は…」

(何…何を云っているの…フェル?)

この首筋のキスマークは当然フェルがつけたものじゃない。

其れは私だって、フェル自身だって解っている事。

なのにそんな嘘をイグナーツに云うという事は──

(助けてくれようとしている?)

今のこの現状を打破するためにとりあえずフェルがイグナーツに嘘をついたと、そう考えるしかなかった。

「ほら、行こう、アメリア」
「あ…」

フェルにサッと腕を取られ、私はイグナーツから放された。

だけど

「待ちなさい」
「!」

反対側の腕をイグナーツに取られ、私はフェルとイグナーツの板挟みになっていた。

「アメリアの手を放せ」
「話はまだ終わっていないよ、フェルディナント。アメリアは置いていってもらおうか」
「置いておける訳ないだろう。騎士として護るべき姫君を置いて去れる訳がない」
「其の騎士という身分で君は姫君に迫ったという訳かい?」
「っ!」

私を間に挟んでイグナーツとフェルの云い合いが止まらない。


(どうしよう…どうしてこんな…)

ノワールから受けたひとつの痣を発端に、イグナーツとフェルと、そしてもしかしたらザシャルとも、今までとは違った関係になって行くのかも知れないと、漠然とした不安に包まれた私だった。

Schwarz Mythos
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