翌日の日曜日はお店の定休日だった。

「ふあぁ~」

いつもより遅い時間に起床し、身支度と軽く朝食を済ませてからお店の前の掃き掃除をしていた。

日曜日の町は静かだ。

町の人たちは其々日曜日なりの用事があって、行楽や買い物などに出かけていていつも以上に閑散としていた。

だから定休日を日曜日にしたという処だったけれど──

「夜更かしでもしたか」
「っ!」

もう一度大きく欠伸をしたところで声を掛けられドキッとした。

「ん…ひょっとして今日は休みか?」

いつもと同じように着物姿の東藤さんが頭を掻きながら私を見つめた。

「あ、おはようございます。えぇ、日曜日は休みです」
「おはよう──って、そうか、休みがあるんだったな」
「ひょっとして…朝ご飯を食べに来ましたか?」
「あーいや、まぁ」

東藤さんが歯切れ悪く応えている時、いきなりお腹からぐぅぅぅ~~と聞き慣れた音がした。

「…お腹、空いているんですね」
「…」
「どうぞ、中に入ってください」

ほんのり顔を赤らめた東藤さんが可笑しくて思わずお店に誘ってしまった。

(なんだか放っておけないって感じ)

恋愛感情は持たないと決めてからも、東藤さんに対する気持ちは変わらず甘くあった。

其れはきっと、祖母が東藤さんに持っていたかも知れない気持ちと同じものなのかも知れないと感じ、だから今までと同じように接する事が出来ると思ったのだった。



「ピラフ、おまちどうさまです」
「ありがとう」

お店で出せる軽食を作り東藤さんの前に出した。

いつも通り美しい所作で食べ始めた東藤さんが、不意に私に視線を送った。

「君、顔色よくないな」
「そうですか?んーきっと寝不足のせいですね」
「先刻も云ったが、夜更かしでもしたのか」
「はい、ちょっと調べものをしていて」
「調べもの?」

(なんだか話の流れ的に訊けるかも)

私は思っていた事を口に出してみた。

「東藤さんの小説を探していたんです」
「ブッ!!」

私がそう云った瞬間、東藤さんは盛大に噴き出しだ。

「わわっ、ご飯粒が」
「す、すまない──って、君が変な事を云うからだ!」
「変な事ですか?だって東藤さん、小説家だって云っていたじゃないですか。どんな本を書いているんだろうと興味があって」
「調べるな、そんなもの」
「どうしてですか」
「くだらないからだよ」
「…」

(この頑なさはなんだろう)

眉間に皺を寄せながら東藤さんは黙々と食事を再開した。

(単なる照れ隠しなのかな)

知っている人に書いた作品を読まれるのを嫌う作家さんもいるとは思う。

(でも他の人は知っているんだよね)

一昨日の飲み会でこの件の話が出た時、北原さんや南さんは東藤さんの書かれたものを知っている様な口ぶりだった。

(う~ん…これは北原さんたちに訊いた方が手っ取り早いかな)

なんて考えていると

「ちなみに北原や南に訊こうと思っても無駄だからな」
「!」

(な、なんで考えている事を)

「あいつらは何も知らないから。訊いても何も答えないぞ」
「…」

(口止めしているって事?なんで其処まで)

この話は此処までと云わんばかりの雰囲気に私は其れ以上、東藤さんに話し掛ける事は出来なかったけれど

(そんな風に頑なだと益々知りたいと思ってしまうんですよ)

と、ある種の執念みたいな気持ちが湧いてしまった私だった。

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