(東藤さんは蘭さんと同じ──とはどういう事だろう?) 

蘭さんから語られる東藤さんと蘭さんにとっての祖母の存在。

其れは孫である私が思うのと同じくらい大きくて大切なものだったらしいという事が解った。

「先生も十喜代さんにはとてもお世話になって、ある種の恩も感じている処があるの」
「…はい」
「先生の口からはっきりと訊いた訳じゃないから解らないけれど、多分、あたしと同じ様な気持ち、想いで美野里ちゃんに接していると思う」
「…っ!」

(其れって…)

「だからね、先生から受ける好意を…勘違いしないようにして欲しいの」
「…」

(あぁ…そういう事、か)

蘭さんは遠巻きに私を守ってくれようとしているのだ。

私の悪い癖である勘違いから恋に落ちて──そして傷ついてしまう前に

(という事は)

東藤さんに恋をしてはいけないと──いう事を念押しされたのだ。

「あたしの早とちりかも知れないけれど…何となくね、昨日の様子とか見ていたら…多分美野里ちゃん、先生の事を好きになっちゃうんじゃないかなと思ってしまって」
「…」
「でもね、先生って…そういうのに向かない人なの」
「…」
「普通に恋愛して、結婚して、誰かと共に人生を歩んで行く様なタイプじゃないのよ」
「…」
「だから美野里ちゃんが先生の事を本気で好きになったら…傷つくのは美野里ちゃんの方なのよ」
「……ありがとうございます」
「え」

蘭さんの話を静かに訊いていた私は色々複雑な気持ちに苛まれていた。

「でも…大丈夫ですよ、私。東藤さんの事、そういう対象とは見ていませんから」
「…本当?」
「はい──ただ…カッコいいなとか、小説家っていう肩書にドキドキはしましたけれど…私には合わないタイプだなって」
「…」
「だから大丈夫です。其れに私、当分恋愛したいとか思っていませんから」
「…」
「とりあえずこのお店を軌道に乗せて自活出来るようにするので精一杯で」
「……そう、ならよかった」
「はい、心配してくださってありがとうございます」

(私…ちゃんと笑えている?)

蘭さんに云った事は半分は本当。

だけど半分は──

(私は何処かでまだ夢見ていたのかも知れない)

普通の恋愛をして結婚して、幸せな生活を送りたいという願望は全然捨てきれていない。

でも其れは

(東藤さんには求めてはいけないという事なんだ)


──私はこの一件から東藤さんをそういった対象で見る事を止めたのだった



色んな事が押し寄せた一日が終わり、ぼんやりと居間で座りこけていた。

(あ…そういえば)

私は気になっていた事を思い出し、ノートパソコンを開いた。

(東藤さんって小説家だって云っていたよね。どんな本を書いているんだろう)

恋愛対象としては見なかったけれど、純粋に東藤さんという人への興味はあった。

何よりも身近に小説家という人がいる事にワクワクしていた。

しかし【東藤雄隆】と検索してみるけれど

「…んーヒットしないなぁ」

該当する情報は何ひとつ出てこなかった。

「…あ、そうか」

其処でようやく気が付いた。

小説家といっても本名で執筆している訳ではないのかも知れないという事に。

「ペンネームかぁ」

そんな初歩的な事を忘れていてガッカリした。

(あーあ、残念)

東藤さんが書いた小説を読みたいと思った。

昔から本を読むのは好きだったし、友人の職業が出版社の編集者という事も本が身近にあった要因のひとつだった。

「…訊いたら教えてくれるかな」

そんな事を考えながら、其の日夜遅くまでネットサーフィンをしてしまった私だった。

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