『ちとせ、僕、フランスに行くよ』


そう武流から訊かされたのはほんの三日前だった。

正直私は武流と約束していた旅行がキャンセルにならなかった事で武流のフランス行きの話はなくなったのかな、と思っていた処があった。


でも実際は違った。


『旅行から帰った翌日の便が取れて…其れでフランスに行くよ』
『…』


事もなげにそう云った武流に掛ける言葉がなかった。

心の中がガッチガチに固まってしまって吐き出すべき言葉が中々声にならなかった。


『僕…色々考えたんだ。ちとせの事は勿論、自分の将来について』
『…』
『母さんから云われた。今の僕にはちとせの事を好きだという気持ちしかないんだって事を』
『え』
『好きだって気持ちだけじゃちとせを守れないという事に気づかされたんだ』
『…』
『今まで僕はちとせを手に入れる事ばかりを考えて来て他の事を考えるという余裕がなかった』
『…』
『でも其れじゃダメ、なんだよね──其れにようやく気が付いたんだ』
『…武流』


以前武流の将来に関する事を訊いた時に感じた違和感を武流自身も気が付いたようだった。


『だから僕、とりあえずフランスに行ってみようと思う』
『!』
『ちとせとの将来の事を考えるためにも少しの間だけちとせから離れて、僕自身ひとりになって何が出来るのか、何がしたいのかを探してみたいと思ったんだ』
『…』
『ちとせとの未来のために僕はフランスに行く』
『……ん、解った』


私がそう答えた時にはボロボロと涙が零れ落ちていた。

其れを見た武流は温かな指先で拭ってくれた。


『泣かないでちとせ──これは別れの報告じゃないんだから』
『ん』
『ちとせと一緒になるための…えっと…試練だよ』
『し…試練…かぁ』
『今までの僕よりもうんとレベルアップしてちとせの元に帰って来るよ──そうしたら其の時は』
『…其の時は?』
『僕のお嫁さんになってくれる?』
『!』
『出来るだけ早くレベルアップして帰ってくるつもりだけど…其の日までちとせは待っててくれるかな』
『…うん、勿論』
『え』


私は涙を拭ってくれたまま頬に置かれていた武流の掌をそっと取り、唇を寄せてチュッとキスをした。


『私も少しでも武流に相応しい女性になって…武流が迎えに来てくれるの待っているから』
『…ちとせ』
『ずっと…ずっと待っているから』
『うん…ありがとう、ちとせ』



──武流が決意した事に私はなんの不満もなかった



私との未来を見据えて真剣に考えてくれた結果の選択だというのがとても解ったから。

かえってそんな選択をした武流の成長ぶりが私には眩しくて仕方がなかった。


(広い世界に出て色んなものを見て一回りも二回りも成長した武流に逢いたい)


ただそんな想いから私は武流との先の見えない別離を受け入れる事が出来たのだった。











「あぁん、あんあん!」
「ふっ…ん、あっ」

温泉で交わって、そして豪華な夕食を堪能した後、寝床に入ってからも私と武流は厭きもせずに何度も交わっていた。


「はぁはぁ…た、武流ぅ」
「凄いね…ちとせ…僕のモノ…千切っちゃいそう」
「~~云わないでぇ」


何度も冒されている私の中は武流の衰えを感じない太いモノを奥深くまで呑み込んでいた。

何度も何度もキュウキュウと締め上げて、武流の事を放したくないという気持ちがこんな処にも表れてしまっているのかと思ったら恥ずかしくて仕方がなかった。


「はぁ…ダメだ…何度抱いても飽きない」
「…私も…だよ」
「こんなんで大丈夫かな…」
「え」
「ちとせ無しで僕、何処まで耐えられるか不安だよ」
「ふふっ、其れは私も同じだから」
「──浮気したら赦さないよ」
「しないよ?っていうか武流こそフランスの美人さんに囲まれてつい──って事になったら」
「なる訳がない」
「!」

武流がグッと唇を寄せ、其のまま深いキスを仕掛けた。

「んんっ、ん、ん」
「ふっ──ん…僕が浮気するとでも?」
「…」
「こんなにちとせに溺れている僕が?──其れこそ要らぬ心配だよ」
「…ん…ごめんね」
「毎晩ちとせの事を思い出してひとりでするよ」
「~~そ、其れって」
「ちとせも。僕を思い出してひとりでしてね」
「やっ…は、恥ずかしいっ」

恥ずかしさから火照った体はまた武流を欲して疼き出した。

「あぁ…またちとせの中…蠢いている」
「~~~云わないで」
「今夜は寝かさないよ──ずっとずっと溶け合っていよう?」
「…うん」


初めてのふたりきりの旅行は離れ離れになる前の最後の想い出作りになった。

だけど決して哀しい意味での最後ではない。

今まで狭い中でのお互いしか見えていなかった時の関係はこれで終わりという意味の最後。

これからはもっと広い世界を見てお互いが成長し合える関係になるためのけじめの交わり合いだ。


(今度武流と逢った時に、成長したなって思ってもらえるようになっていたい)



武流から受ける甘い痺れの中、私はそんな事を考えていたのだった。


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