携帯で時間を確認すると約束の時間15分前だった。


(ちょっと早く来すぎちゃったかな…) 

風でヒラッと翻ったスカートの裾を気にしながら歩いていた歩幅は思っていた以上に大きかったようだ。


プラネタリウムがある敷地内の緑地公園に入ってからより一層胸がドキドキしていた。


(武流くん、来ているかな)

武流くんから誘ってもらったプラネタリウム。

小学校の社会科見学以来の場所で懐かしいという気持ちと──


(…武流くん)


武流くんとはあの日以来初めて顔を合わせる。

どんな顔をして逢えばいいのか戸惑っている。

(でも…来てくれるかどうか…)

黙ったまま、何も云わずに武流くんの家を飛び出した。

怒っているかも知れない──そんな気持ちがほんの少し歩幅をちいさくした。


『大丈夫だよ、もう絶対ちぃの怖がる事はしないから安心して逢っておいで』

私からの伝言を伝えに武流くんに会った冴ちゃんはそう云ってにっこり笑っていた。

其の言葉を受けて少しだけ勇気が出たのだけれど。


(…でもこの服)

デート用コーディネートだといって今着ている服を選んでくれた冴ちゃんとサムさん。

其れはまるでお姫様がお忍びで街に遊びに来ているような可愛らしいワンピース。

華美ではない細かなレース使いがおとぎ話に出て来る女の子が着ている洋服を思い浮かべさせた。

(あんまり着た事がない服だからちょっと慣れないけど)

冴ちゃんが絶対にこれがいいと云って譲らなかったお墨付きだ。


(うん…頑張ろう!)

グッと拳を握って決意を新たにしていると


「ひとりかな」
「んな訳ないじゃない?」


(…ん?)


気が付けばちらほらと何人かの女の子のグループが点在していてヒソヒソ話しているのが聞こえた。


「モデル?なんか撮影とかしているのかな?」
「えぇ~お近づきになりたいんだけどぉ」
「こっそり写メ撮ったらダメかな」


(ま、まさか…)


この見慣れた風景。

ちいさな時から何度も見て来たこの光景に胸が高鳴る。

(これって…これって)

遅い速度で歩んでいた私の目はなんの迷いもなく噂されている其の人の姿を捉えた。

と同時に

「──あ」
「!」

視線が絡みつく様に交わった瞬間

「ちぃ」
「~~~」

プラネタリウム入り口前の大きな楠の木の前に立っていた武流くんが私を見つけた瞬間、駆け寄って来た。


「あ…あの…」

すぐ目の前に立つ武流くんと何故か視線が合わせられなかった。

(え…えっ…?)

どうしてだかカァと恥ずかしさが込み上げて来て、心臓が物凄い勢いで鼓動を打っていた。

(や…なんか…く、苦しい)

「…ちぃ」

(ふぁ…!)

武流くんの声を間近で訊いただけで気が遠くなりそうだった。

(わ、わた…私っ)

武流くんに対して今まで感じた事のないときめきに戸惑った。


こんな…


姿を見ただけで


声を訊いただけで


(胸が潰されそうなくらいにドキドキしている!)


「ちぃ…あの…ぼ、僕…」
「い、行こうっ」
「え」
「中、入ろう!」
「…」

私はまともに武流くんを見る事無く、そそくさとプラネタリウムの中に入って行った。

其のほんの少し後を武流くんがついて来る気配を感じながらなんとか顔の熱を冷まさないと必死だった。


──まさかこれほどまでだったとは思わなかった


(私…こんなに武流くんの事が…)


気持ちを自覚してから初めて目の当たりにした武流くんに感じた気持ちを受けて、私は本当に武流くんの事が好きで好きで仕方がなかったんだなと改めて確信したのだった。



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