日曜日 この日は約束の日だった。



ピンポーン


「…」


ピンポーンピンポーン


「…」


ピンポンピンポンピンポンピンポン


「~~~なんなんだよ!」

手元に置いてある携帯を見るとまだ朝の7時だった。

こんな早朝に迷惑な事だ。

渋々起きて玄関ドアを開けると──


ガンッ!

「痛っ!」

開けた瞬間頬に激痛が走った。

一瞬目の前がチカチカして思わずよろけてしまった。

「な…何だよっ──」
「なんだとは随分なご挨拶ね」
「!」

僕の目の前には仁王立ちの泉水がいた。

「目、覚めた?」
「…」
「あら、まだお目覚めじゃないのかしら?じゃあもう一発──」
「…何発だって殴れよ」
「…」
「おまえが此処に来て僕を殴る理由、解っているから」
「…」
「殴ればいい…殴り倒してくれ」
「其処まで云われるとかえって萎えるわね」
「──は」

泉水はズイッと中に入り、玄関ドアを閉めた。

「ご近所迷惑になるから」
「…」
「そう、解っているのね、わたしが此処に来てあんたを殴った理由が」
「…ちぃは」
「…」
「ちぃは…ちとせはおまえの処にいるんだろう?」
「いないわよ」
「えっ」
「ちぃはいない」
「お、おまえ…泉水、どういう事だ!」

冷静に構えていたはずの感情が泉水のひと言であっという間に激高した。

「…」
「泉水、ちとせは昨日、おまえの処に行ったんだろう?!」
「…」
「……違う…のか?」
「…」
「っ!」

てっきり泉水の処に身を寄せていると思い安堵していた事が間違っていたと解ると、其処にジッとしていられなかった。

僕は慌てて靴を履く。

「何処に行くの」
「どけ!ちとせを探しに行く」
「何処にいるかも解らないのに?結構単細胞ね」
「! おまえ、なんでそんなに冷静でいられるんだ!ちとせが昨日から家に帰っていないんだぞ!僕はてっきり泉水の処にいるとばかり──」
「落ち着きなさいよ、このレイプ野郎!」
「!」

泉水の其の恫喝で一瞬にして全身から力が抜けた。

「今はいないけど…来たわよ、昨日、うちに」
「……」
「酷く憔悴しきった様子で…高熱を出してうなされていたわ」
「!」
「全部訊いた。あんた随分酷い事をしたものね。本当赦せない」
「…」
「わたし、前に云ったわよね?ちぃに酷い事だけはするなって」
「…」
「もし酷い事をして泣かせるような事があったら──てめぇのナニを握り潰してやるって」
「!」

(思い出した!)

「ねぇ、要らないわよね?ちぃを泣かせるだけのそんな粗チン」
「な…なっ」
「本当…まさか本当にソレを使って泣かせるような度胸があんたにあっただなんて…ある意味感心するわぁ」
「待てッ!泉水…そ、其れをしていいのはおまえじゃない!」
「──はぁ?」
「僕を罰していいのはちとせだけだ…!ちとせからの罰ならなんでも甘んじて受ける!」
「…」
「だから…おまえは精々僕を殴る程度で堪えてくれ」
「…」

僕は玄関の三和土で土下座をした。

且つてちとせの知らない処でちとせをどちらが得るかという牽制をし合った同士である泉水に対して申し訳ないという気持ちが僕をそうさせた。


「…」

カシャッ

「!」
「土下座画像、もらった」
「…泉水」
「本当はわたしが此処に来たのはちぃからの伝言を伝えるためよ」
「──え」
「『約束、忘れていないよね。待っているから』」
「…」
「其れだけ──じゃあね」
「! ちょ、ちょっと待て、泉水」

僕は思わず泉水の腕を掴んだ。

「何よ、わたしまで襲う気?」
「バッ、馬鹿、恐ろしい事を云うな!違う、ちとせは…ちとせは僕と逢ってくれるのか?!」
「…」
「あんなに酷い事をした僕に…」
「そんな事知らない。ちぃが何を考えているのかなんてわたしは知らない。ただわたしは頼まれたから来ただけ」
「…」
「そんな伝言をしてもちぃは来ないかも知れない」
「!」
「其れにもしかしたら小ノ澤を連れてあんたに復讐するために行くのかも知れない」
「…」
「兎に角伝えたから──まぁ、行くか行かないかもあんたの自由だけれど」

其の言葉を最後に泉水は家から出て行った。


(…約束)


『武流くん、13時に現地集合だよ』


ちとせからそう云われた事がもう遠い昔の事のような気がする。

(あの約束はもうなかった事になったのだとばかり)


『まぁ、行くか行かないかもあんたの自由だけれど』


(──行くに決まっているだろう)


例えちとせが来てくれなくてもいい。

小ノ澤を使って復讐されたっていい。


だけどちとせに逢えるかもしれないというチャンスが1%でもあれば僕はどんな事をしたって行くに決まっているのだった。


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