機械音がカシャカシャと響く度にバッバッとまばゆい光が瞳孔を襲う。

「いいよぉ~もっと視線、こっちに向けて?」

「…」

掛けられる声に応えるようにジッと目を見開いた。

「…なぁに、今日はやけに挑戦的だねぇ」

「…」

呟かれる声は一応聞こえるけれど、直ぐに耳から抜けて行ってしまう。


「はい、終了~」

「…」


今日の撮影場所は彼の家だった。

掛けていたソファから腰を上げ、彼の元に寄って行った。

「ほら、今日はこんな感じ」
「…」

パソコンに中に何枚ものわたしの画像が映し出される。

其れはいつもの見慣れているただのわたしの顔だ。

「ねぇ、何かあった?」
「…別に」
「ふっ、そんな伏し目がちに素っ気なくされるとゾクゾクするなぁ」
「あっ」

急に腰を引かれ、其のまま彼の腕の中に体を埋められキスされた。

「ん、んっ」
「っ」

直ぐに口内に舌が捻じ込まれクチュクチュと絡みつく音が響いた。

「…っふ、熱いね…もう欲情しちゃっている」
「…」

そう云うと彼はわたしを軽々と抱きかかえて奥の寝室にあるベッドの上に優しく下ろした。

「冴ちゃん…可愛いねぇ」
「…」
「信じられないくらい綺麗で…妖艶で…んっ、どうにかなってしまいそうだ」
「…」

軽口を叩きながら彼はわたしの服を脱がせ露わになった胸にぽってりとした唇を押し付けた。

「はぁ…本当なんでこんなに綺麗なの…信じられないよ…ん、んっ」
「…綺麗なんかじゃない」
「…」
「わたしはとっくに汚れきっている」
「…其れってオレに散々弄ばれているからって意味で?」
「……違う」
「そうなの?オレ、大概自覚あるよ。こんな美人な女子高生をオレなんかが穢しちゃって悪いなぁって」
「…あんたは悪くないわ。わたしが望んだ事だもの」
「…」
「だからいいの──早く其れ、挿入れて」
「…りょーかい」


わたしの上でガンガンと腰を振っているこの男は自称カメラマンの東雲 勇(シノノメ イサム)

通称、サム。

わたしより十歳上の27歳。

彼との付き合いはわたしが高校に入った年からだった。

出逢いはナンパだった。

街でいきなり『写真、撮らせてください』と云われたのがきっかけだ。

いつもならそんな誘いは一蹴するのだけれど、何故か彼の求めには応えようと思った。

其れは彼が女装をしていたからだ。

背が高く、声も低い。

喉仏があるから中身は絶対に男なのだ。

だけど彼の其の見かけはどうしても女にしか見えなかった。

『女装、趣味なんだけど中身はれっきとした男だよ?』

そんな彼のギャップに興味深かったという事もあって、わたしは彼の被写体になる事を承知した。

最初の頃はただ色んな処に出かけてひたすら写真を撮るという付き合いだった。

プロのカメラマンになるために今はとあるプロカメラマンに弟子入りしていて雑用をこなしている身だと云った。

何度もコンクールに出展しても落選してプロへの道は中々厳しいと笑いながら愚痴っていた。

だから一度冗談っぽく『わたしの写真を送れば引っかかるかも知れないわよ』と云ったら酷く怒られた。

『君の写真はオレだけのものだ』と見たこともない真顔で云われた時、わたしの中で彼に対しての気持ちが変化して行った。

そうして深い関係になったのはごく最近の事だった。




「あっ、あっ」
「はぁ…冴ちゃん…冴…冴」
「…」

ズンズンとわたしの奥底を突きまくる彼のモノに痺れるものを感じながらも、わたしの中を本当に潤しているものはこの彼の温もりだった。

「冴…好きだ、好きだ…」
「…」
「放れないで…んっ、オレから離れて行かないで…!」
「…」

グチュグチュと激しく私の中を冒し、力一杯抱きしめられながら本音を吐露する彼に徐々にわたしの心は解されて行く。

わたしにこんな気持ちを抱かせるのは生涯ちとせだけしかいないと思っていたわたしは、彼と出逢った事で唯一の存在はひとつではないのだと知った。


「…冴……っ」
「好き」
「………へ」
「わたし、あんたの事が好き」
「……」

激しく律動していた下半身は止まり、彼は茫然とわたしの顔を見つめた。

「そういえば云ってなかったなと思って…」
「…」
「…何、もう終わり?」
「……ううん、まさかだね。まだ冴ちゃん、イカせてないし」
「ふっ…」


何故か今になってちとせの事が遠くに感じられた。

ちとせの恋が成就したのを見届けると何故か今までのような愛くるしい気持ちが萎んで行くようだった。

一途にちとせだけを求めていたわたしの熱は徐々に沈静して行く。


そして気が付いたものが沢山あった。


今、わたしの傍にいるのはちとせじゃない。

この目の前にいる彼だった。

ちとせの代わりに彼を、という気持ちがないと云ったら嘘になるけれど…

でも

心に正直になって向かい合ってみれば、わたしが今、本当に欲しくて手に入れたいと思うのは──


真っ暗闇の長い長いトンネルから抜け出したような爽快感が今、私の全身を覆っていた。

secretcrush
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