「何読んでいるの、ちぃ」
「あっ」

翌日休み時間にこっそり携帯で柔道に関するページを閲覧していると冴ちゃんに覗き込まれた。

「…柔道?何、なんでそんなの見ているの」
「あ…あのね、昨日云っていた…1年の子ね、柔道部だったの」
「…」
「其れでね、なんかマネージャー募集していて…ちょっと興味があって…やってみようかなって」
「ちぃが柔道部のマネージャー?──向いていないよ」
「えっ」
「そもそも運動部のマネージャーって凄く大変なんだよ?ただ練習をボーッと見ているだけじゃないんだよ」
「其れはそうかも…だけど」
「先回りして動かないといけないし、力仕事だってあるよ」
「…」
「そんなのちぃに向いているとは思わない」
「……そ、其れでも」
「…」
「其れでもやりたいって思ったの、まずは其処から接点持たなきゃ…ただでさえ学年違うんだし…」
「…」
「私、頑張りたいの、小ノ澤くんに感じた気持ち、大事に育てていきたいって思っているから」
「……そう」

冴ちゃんははぁとため息を吐いて、そして云った。

「解った。じゃあちぃの好きになった男っていうの、わたしに会わせて」
「えっ」
「ちぃが其処まで云うほどの男って興味ある。いいでしょう?」
「……」

一瞬(厭だ)という気持ちが湧いた。

だって小ノ澤くんに冴ちゃんを会わせたら絶対冴ちゃんの事を好きになって…

(今までと同じ事をまた繰り返す事に)

「ちぃ?どうしたの」
「…」
「まぁ、無理にとは云わないけど。わたしがこっそり見てもいいんだけど」
「…わ、かった」
「え」
「解った…放課後、一緒に小ノ澤くんの処に行こう」
「…」
「マネージャーの件で訊きたい事あったし…其の時一緒に」
「…いいんだね?」
「いい、いいに決まってるよ」
「──じゃあ放課後ね」
「…」

少しだけ不安な気持ちがあったけれど、私は決めていた。

例え小ノ澤くんが冴ちゃんの事を好きになっても、私は私の気持ちを頑張って伝えるんだって事を──




「1年のおのざわって男子だって」
「…おのざわ」
「なんでもやたら背が高くて人混みの中に居ても目立つから直ぐに解るらしいわよ」
「どんだけ巨人好きなんだ、ちぃは」

ちとせから離れたわたしは少し距離を置いて今宮に話し掛けていた。

「放課後、ちぃと一緒に見て来る」
「…僕、其れより前に見て来る」
「1年の教室に行くの?あんたも相当目立つわよ」
「なんとか隙を伺って接触してみる」
「くれぐれも相手に悟られないでよ。少しでもちぃの邪魔をしたら…絶対に赦さないから」
「其れを僕に云うの?泉水こそ理性ぶっ飛ばして噛みついたりするなよ」
「…」

今宮への窘めはわたし自身のものでもあった。

本音を云えばちぃを他の男に取られたくないという気持ちから、相手をとことん翻弄してやろうとも思ったけれど…

「ちぃの哀しむ顏は見たくない」
「そんなのわたしだって同じよ──ちぃには幸せになってもらいたいもの」
「奇遇だな、其処は僕も同感だよ」
「…願わくば其の役目は私が背負い込みたいのだけれど」
「其処も同感」

お互い好きな人が同じというのは結構きつい事だ。

わたしも今宮も…

本当はもっと意地悪く、強引に相手の気持ちなんかを考えずにちとせを手に入れる事が出来たなら…


──でもきっと、自らの欲望に忠実になってしまったら幸せと絶望を同時に手に入れる事になるのだろうなと思った


secretcrush
★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチずついただけると執筆の糧になります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村