「泉水さん、オレ、ずっと泉水さんの事が好きで…オ、オレの彼女になってください!」
「ごめんなさい」
「うわっ、瞬殺!どうしてダメなの?付き合っている奴、いないんだよね」
「…」
「今宮とは噂だけだったんだよね?!」
「そうだけど…でもごめんなさい」
「どうして!あ、まずは友だちからでもオレ──」
「好きな人がいるから」
「…え、好きな人?」
「絶対にモノにしたいって思っている好きな人がいるから無理なの」
「……泉水さんが…モノに出来ない男なんているのかよ」
「中々手ごわい相手なの。だからごめんなさい」
「……そっか…じゃあ、仕方がない…か」

(この人はサッパリタイプでよかった)

自らが招いた事態とはいえ、まさか此処まで堰を切ったように告白して来る奴がウヨウヨ出て来るとは思わず、若干(やっちまったな)と思った。

ライバルであり、気に喰わない相手である今宮との付き合っている噂は随分長い間わたしからウザい告白をされるという厄介な行動から守ってくれていた。

だけど徐々に其の噂に耐え難い苦痛を感じてしまって来て、とうとう数日前其れを爆発させてしまった。


「冴ちゃ~ん」
「! …ちぃ」

ドキンッと胸が高鳴った。

ふわっふわで色素の薄いセミロングをたなびかせて小さな体を弾ませながらわたしの元に駆け寄って来る其の姿を見て思わず抱きしめたくなった。

(はっ!ダ、ダメッ!自重っ)

必死になって冷静さを保つ。

「ねぇ、お話終わった?」
「あぁ、終わった」
「…で?」
「? 何」
「呼び出されたあの人とお付き合いするの?」
「は?しないよ」
「えぇーなんで?あの人、サッカー部のエースだよ!なんかプロからスカウトが来ているって噂のある」
「だから何。好きじゃないし、付き合う訳ないよ」
「……冴ちゃんも武流くんも贅沢だ」
「え」

トボトボと歩き出したちとせの後を慌てて追う。

「其の気になればお付き合い出来るのに…ふたりだったら好きな人がいてもなんの苦労もしなくても付き合えるんだろうなぁ」
「…」
「どうして私だけこんななんの取り柄もない容姿なんだろう…時々哀しくなっちゃう」
「…」


あぁ…天使の様な可愛らしいちとせ


「美男美女に囲まれた平凡な私の気持ち、冴ちゃんは解らないんだろうなー」


時々滅茶苦茶にしてやりたくなるほどに苛立つよ


「? 冴ちゃん、どうしたの」
「…ちぃのいい処、沢山あるじゃない」
「え」
「わたしこそちぃが羨ましいよ。そんな女の子女の子した可愛らしい姿してて…わたしなんて棒っきれみたいなデカい女で…何処も彼処もちっとも女の子らしくない」
「…冴ちゃん」
「ちぃには解らない悩みがわたしにだってあるんだよ」
「…」

つい心の澱を吐き出してしまう。

今のわたしは少し弱っている──と思った。


「冴ちゃん!」
「!」

距離があったちとせとの間が急になくなっていて、ちとせがギュッとわたしにしがみついて来た。

「ごめん!ごめんね、冴ちゃんっ」
「…」
「私、厭な子でしょう?!美人でカッコいい冴ちゃんに対して厭味な弱音吐いちゃって!」
「…」
「自分の恋が中々上手くいかなくてイライラしちゃってつい……ダメだっ、私最低!」
「…ちぃ」
「こんなダメで馬鹿な私だけど…嫌いにならないでぇ…」
「…」

(あぁ、もう、本当この素直な可愛らしさは毒だ)

先刻からちとせに抱かれている体が熱っぽかった。

ちとせから感じる温もり、柔らかさ、甘い匂い、其のどれもがわたしの理性を吹き飛ばしそうになっていた。

(ダメだ!本当、ヤバいからっ)

私は名残惜し気にちとせから体を放した。

「冴ちゃん…」
「嫌いになんかなる訳ないよ。わたしは昔からずっと、ちぃの事が大好きなんだから」
「本当?嬉しいっ、私も冴ちゃんの事が大好きだよ!」

(…っ!だから其れ、反則)

邪気のない笑顔で摺り寄せられ、また体が疼き始める。

慌てて冷静になるように頑張る。


(あぁ…でもちぃの好きとわたしの好きは全然違うんだよ)


同性の、女友だちとしてわたしの事が好きなちとせと

同性だけど、恋人としてそういう関係を持ちたいと思っているわたしとじゃ


好きの質が違うんだよ──


secretcrush
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