ずっとずっと願っていた。


僕の秘密を君が知る時が来ればいいのにと。


だけど


其の秘密を君が知った時、僕たちはもう元の関係には戻れないんだろうね──





「…ねぇ、武流くん」
「…」
「ほらぁ、教科書なんて仕舞って?こっちに来てよぉ」
「…」

ベッドの上に座って少しずつ胸元を開けている彼女を見て(またか)とため息が出た。

確か試験勉強がしたいから家に来て──という誘いだったはずなのに、これはどう考えても勉強目的の誘いではないだろう。

「竹内さん」
「ん、なぁに?」
「勉強しないなら僕は帰らせてもらうよ」
「えぇっ、冗談でしょう?!…其れとも、そういう焦らしプレイ?」
「…」
「武流くんだって最初からこういう事が目的で付き合ってくれたんでしょう?」
「…」
「わたしね、武流くんの事がずっと好きだったの。でも武流くんは泉水さんと付き合っているって噂があって…だから告白なんて出来なかったんだけど…」
「…」
「でも今日ね、勇気を出して泉水さんに直接訊いたの『武流くんと付き合っているの?』って。そうしたら違うって云って…これはもうチャンスだって思うでしょう?」
「…」

(泉水のやつ…何勝手に否定しているんだよ)

噂は噂のままにしていればいいものを──と思ったけれど、こういう状況になった今では何もかも遅い。

「ねぇ、いいでしょう?わたし武流くんと付き合えるならなんでもするわ!わたしには武流くんしかいないって思っているの!」
「…」
「其れに…武流くんだって結構遊んでいるんでしょう?そんなにカッコいいんだから当然だと思うけ──」

バンッ!

「!」

思いっきりテーブルに教科書を叩きつけた。

其の破裂音と僕の蔑んだ視線で彼女は一瞬で青い顔をした。

「勉強しないなら帰るね。さようなら」

テーブルに出していた物を手早く鞄に詰め込んで、僕はサッと部屋から出て行った。


『ねぇ武流くん、明日の数学の小テストで解らない処があって…今回はどうしても赤点取りたくないの。だから家で勉強教えてくれない?あ、家には誰も居ないから気をつかわなくていいよ』

そんな誘い文句を真に受けてノコノコやって来た自分自身に腹が立つ。

(だって…確か竹内さんって清純派美少女ってみんな云っていなかったか?)

また噂に騙された──と思った。


彼女の家から一度高校前まで戻って、近くのバス停でぼんやりバスを待っているとトンッと肩を叩かれた。

「え」
「お早いお帰りで」
「…泉水」

其処には今最高に顔を合わせたくなかった泉水 冴(イズミ サエ)が立っていた。

「竹内さんに誘われたでしょう?どう?ヤッた?」
「おまえ…何謀っているんだよ」
「謀る?何を」
「僕と付き合っていないと云ったな」
「本当の事じゃない」
「其れはそうだけど、この噂はお互い都合がいいから放っておこうって云ったじゃないか」
「あぁ…そんな事もあったわね」
「其れをなんだよ、急に」
「…」
「泉水?」

急に黙りこくった泉水の顔を覗くといきなり頬を叩かれた。

「痛っ!」
「急に顔を近づけないでよ、気色悪いわね」
「お、おまえっ…!心配したんだろう、急に黙るから」
「本当、あんたの顔って無駄にキラキラしていてウザい」
「其れは其のままこっちの台詞だ!おまえだって大概キラキラしているぞ!」

「きゃぁ!2年の今宮先輩と泉水先輩よー」
「あぁーやっぱり付き合っているって噂、本当なんだぁー」
「でも…お似合いよねぇ…美男美女で…入り込む隙なんて何処にもない~」

「…」
「…」

下校途中の数人のヒソヒソ話につい黙り込んでしまう。

(あぁ…くそっ!またか)

「…本当ウザい」

泉水がボソッと呟き、そしてはぁとため息をついた。

「なんだよ、何かあったのか?」
「…」
「何かあったなら話せよ。話くらい訊いてやる度量はあるぞ」
「……ちぃが恋した」
「!」

其の瞬間、泉水の何処か浮かない顔と苛立ちの理由が解り、其れと同時に僕の気持ちまで憂鬱になり一緒になってため息をついてしまったのだった。

secretcrush
★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチずついただけると執筆の糧になります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村