『田仲物産が経営不振により、業界大手のKSYM株式会社に吸収合併されるって話があるんだけど』

『うん、其れで其処に含まれる条件のひとつに田仲物産の社長令嬢とKSYM株式会社の社長子息の結婚が含まれているとか何とか…』


トオルさんから訊かされた話。

(田仲物産って…其れ、涼花の親の会社…だよね)

涼花から親の仕事に関する事を詳しく訊いた事はなかった。

一度ちいさい時に遊びに行った涼花の家が余りにも大きくて豪華だったから『お父さん仕事何しているの?』みたいな話から『会社をやっているの』なんて軽く云われた事があっただけで…

(家や涼花の両親の事って私、殆ど知らない)

ただ、涼花はひとり暮らしをしていて、趣味に使うお金はアルバイトを掛け持ちして稼いでいた。

お嬢様なんだからアルバイトなんてしなくてもお小遣いには困らないと思った事が何度かあったけれど、其の度に口先の色んな理由を述べられただけでやり過ごしてしまって来た。

(…ひょっとして私)

涼花の事を何も解っていないんじゃないの──?

そんなうすら寒い気持ちが私の胸中に張り付いてしまった。

「歌也ちゃん、大丈夫?」
「…っ!」

龍に緩く肩を揺さぶられて意識が引き戻された。

「顔色、悪いよ」
「…平気」

心配そうに私の顔を覗き込む龍としばし見つめ合っていると

「詳しく調べてみようか?」
「…え」

トオルさんが呟くように言葉を放った。

「涼花ちゃんの事。気になるんだろう?」
「…」
「少し切り込めば色々解ると思うんだけど」
「…ありがとう、トオルさん。でも、いいや」
「ん?」
「私、涼花に直接訊いてみる」
「…そうか」

折角のトオルさんの申し出だったけれど、何故か陰でコソコソ調べるような真似はしたくないと思ってしまった。

(話してくれないかも知れないけど…其れでも私は涼花から直接訊きたい)

そんな決心をした私を龍も「頑張って」と励ましてくれたのだった。


──しかし其の決意はあっという間にポッキリと折れる事になる


「ねぇ、涼花何処にいるか知らない?」

翌日、大学構内で見つけられない涼花を探しながら共通の友だちに涼花の事を訊くと

「涼花、今日講義休んでいたよ。何、歌也の処に連絡ないの?」
「…うん、何度か電話やLINEしているんだけど連絡つかなくて」
「そうなんだ、心配だね」
「…」

親友の歌也に連絡がないなんてどうしたんだろうね──なんて一緒に心配してくれた友だちと別れて私は再び携帯を手に取り涼花に電話した。

プルルルルルル

「…」

相変わらず無機質な電子音が何秒か続き、そして定番のアナウンスが流れるのを訊いて私は電話を切った。

(なんで留守番設定もしていないのよ)

こんな事は勿論初めての事で、なんだか妙な胸騒ぎがして堪らなかった。

(よし、直接乗り込むか)

電話連絡が取れない以上、涼花の住むマンションに直接行くしかないと思い、私は駅に向かって歩き出した。

しかし

「え…なんで…」

涼花の住むマンションまで行き、其処で私は更に衝撃的な目に遭うのだった。

王子様の作り方
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