「ったく…いつも騒がしいよな、うちって」
「いいじゃない、私、大好きよ十六澤家」
「…そっか」

朔と家を出て、馴染み深い街並みを手を繋ぎながら歩いた。

「あとで真柴家にも顔を出そう」
「いいの?」
「いいに決まっている。近所なんだから問題ないだろう」
「…うん」

お互いの実家が近いとどちらか一方だけに顔を出すという事が難しい。

朔はいつも自分の実家に行く時は必ず私の実家にも寄ってくれるのだった。

「ふふっ」
「何」

思わず握っていた掌に力を込めた。

「朔って本当私には勿体ない位のいい旦那さんだなぁ」
「っ、な、なんだよ突然」

少し上擦った声色と、頬を染めた其の表情は少年の時から余り変わっていない様に思えた。

「あ、そうだ朔、ちょっと寄り道」
「は?何処に」
「私たちの思い出の場所」
「…」

其れだけ云えば朔にも解ったようで、ふたり揃って少しだけ寄り道をするために角を曲がって行った。

少しずつ見えて来る懐かしい其の場所は今もあの時と同じ光景を残していた。

「休日だからかな、結構遊んでいる子どもがいるね」
「そうだな」

私と朔の思い出の公園。

私と朔は此処から始まったような気がする。

入り口近くのベンチにふたり座って公園内で遊ぶ子どもたちを目を細めて見つめる。

「ただいまぁ」
「おかえりなさい、あなた」
「ほら、おみやげのおすしだぞ、ポチもいっしょにたべよう」
「わんわん…って、なんでいぬにすしくわせんだよ」
「あーこうちゃん、いぬなんだからしゃべっちゃだめ」
「うるせー、さっきからりんとまなぶばっかがふうふじゃねぇか」
「だってこうき、じゃんけんよわいもん」
「ちくしょーおれにもおとうさん、やらせろー」

男の子ふたりと女の子ひとりがままごとで遊んでいた。

「ふふっ、なんでおままごとっていつも夫婦設定なんだろうね」
「さぁ…知らない」
「朔はやった事ある?おままごと」
「……ないよ」
「ん?なぁに、今の間は。さてはやった事があるな」
「ないよ、子どもの時は」
「は?じゃあいつやったのよ」
「っ、だからやった事ないって」
「怪しい~」
「あぁ、煩い!ほら、そろそろ行くぞ」
「あ、そうだね。あまり遅くなるとみんな心配するね」

名残惜しかったけれどお使いの途中だった事を思い出し、再び朔と手を繋ぎ思い出の公園を後にした。


ゆっくりと歩を進んでいると、朔がぽつりと零した。

「…子どもが出来たらさ…絶対この公園で遊ばせような」
「え」
「子どもがままごとやりたいって云ったら俺、付き合ってやるんだ」
「…朔」
「男でも女でもいい。やりたい事やらせてやるんだ」
「…うん」

何故急にそんな事を云ったのかよく解らなかったけれど、朔にとってままごと遊びには何か思い入れがあるのかな?なんて思ったりした。

(でも…うん、いいかも)

家族でままごと遊びをするのも愉しいかも知れない。

「朔はきっといいお父さんにもなるね」
「そんなの…紅実だって絶対いいお母さんになるよ」
「…私たち…お互いをほめ過ぎだよね」
「まぁ…な」
「…ふふっ」
「はははっ」


怒ったり泣いたり戸惑ったり…

色んな気持ちでこの公園を行き来した事が懐かしく思えた。

(私たちにとっては特別思い入れのある場所になったね)

そんな事を考えつつ、まだ少しだけ未来の事になるだろう親子三人…もしかしたら四人でこの公園に足を運ぶ時を思い描きながら其の日が来るのを待ち遠しく思った私だった。





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