休日のある日、私と朔は十六澤家に来ていた。 

「あ、紅実ちゃーん」
「月子ちゃん、久しぶり」
「いらっしゃい、紅実さん」
「お邪魔します、お義母さん」

一通りの挨拶をしながらリビングに入ると、お義父さんがソファに座っていた。

「あぁ、紅実さん、よく来たね」
「はい、お呼ばれに来ました」
「ささ、此方に来て座りなさい」

いつも朔の実家に来る度に思うけれど、十六澤家は家族仲がとてもいい。

休日だというのにお義父さんは家に居て月子ちゃんとお義母さんと過ごしている。

(いいなぁ…憧れちゃう)

そんな事を考えながらぼんやりしていると、私の隣に座った月子ちゃんがいきなり

「ねぇ、紅実ちゃん、赤ちゃんいつ生まれるの?」
「へ?」
「だってぇお兄ちゃんと結婚したじゃない。だったら赤ちゃん、生まれて来るんだよね?」
「え…いや、其れは…そんなに直ぐには~~」

しどろもどろになっている私をお義父さんもお義母さんも、そして朔も笑いながら眺めていた。

「そうだな、いつになったら赤ちゃん、生まれるんだろうな」
「ちょ…朔?!」

いきなり朔が調子に乗って月子ちゃんの発言に追い打ちをかけた。

「朔くんは早く欲しいの?赤ちゃん」
「まぁ…出来れば…欲しいよ」

(えっ!そうなの?!朔)

朔からそんな事を訊いた事がなかった私は驚いてしまっていた。

「でもまぁ、其ればかりは授かりものだからな。自然の流れに任せてというのが一番いい」
「えぇー月子、早く紅実ちゃんの赤ちゃんと遊びたいの!ねぇ、絶対女の子生んでね?月子の妹にするから」
「月子、紅実ちゃんの赤ちゃんは月子にとっては姪になるのよ?」
「めい?」

(あぁぁ…また恥ずかしい方に話が盛り上がって行く)

このあっけらかんとした明け透けな物云いが出来る十六澤家に時々困惑する時もあるけれど、でもやっぱり私にとってはこの家が理想の、目指すべき家族像だといつも思うのだった。


「ところで朔、新婚旅行はいつ行くんだ」
「あーまだ具体的な事は決めていないけど」
「そうか、紅実さんの勤め先の休み次第という処か?」
「まぁ、そうだな。お互いまとまった休みが取れたらと思っているけど」
「そうか、おまえの方は気にする事ないからな。紅実さんの休みに合わせてドンと有給取れ」
「いや、其れはいくら何でも暴挙過ぎるだろう。一応俺の部署に配慮して取らないと」
「いいんだ、社長の息子権限でおれが赦す」
「うわぁ…厭だ、こういうワンマンな社長が治める会社って」
「なんでだ、息子想いのよき父親だろう」
「一社長としてどうなんだって云ってんだよ」

(あーあ、また始まった)

いつもの事ながら朔とお義父さんの云い争いは何処か幼稚さを孕んでいてほのぼのしてしまう処があった。

「ねぇ紅実さん。お夕飯食べて行くでしょう?」
「えぇ、ご迷惑じゃ無ければ」
「大歓迎よ、よかったらお手伝いしてくれない?」
「喜んで」
「あー月子もする!お手伝いするー」
「はいはい、じゃあ女三人でお料理の会を開きましょうか」

にこにこと笑顔を湛えながらお義母さんはいそいそとキッチンに向かう。

こんな何気ない日常の風景の幸せな家族団らんの一員として私がいられる事がこの上なく幸せだ。


「ん?あら厭だ、みりんの買い置きがないわ」
「あ、私買って来ます」
「そう?ありがとう、お願いするわね」
「なんだ、紅実、買物に行くのか?」
「うん、すぐ其処のコンビニ。みりん置いてあったよね」
「さぁ、知らないけど…俺も一緒に行くよ」
「ひとりでも大丈夫だよ」

エプロンを外しながら話している私に近寄って来た朔がこそっと私に耳打ちした。

『ふたりになりたいの』

「!」

耳打ちされた言葉にドキッとしてほんのり顔が熱っぽくなった気がした。

「おぅ、朔も行くなら酒買って来てくれ。おまえも紅実さんも飲むだろう?」
「俺は車だから飲まないよ」
「そうか、じゃあ紅実さんの分」

そう云いながらお義父さんがお金を渡してくれた。

「あ、紅実ちゃん、月子チョコレートのアイスが食べたい」
「ふふっ、了解」
「あらまぁ、欲しいものリストが増えてしまったわね」
「大丈夫です、じゃあ行って来ますね」

三人に見送られながら私と朔は買い物へと出かけて行った。

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