カラオケルームなのに何の曲も流れていなかった。 

ただ私の鼻声気味の言葉が響き、やがて其れも消えると少しの間、恐ろしい程の静寂が辺りを包んだ。

そして

「…はぁ…全く阿呆らしい」

そんな恭輔の呆れた声が部屋に漏れた。

「阿保らしいって…」
「杏奈、そんな言葉なんかで悩んじゃ駄目だよ」
「え」
「どうして其の場でキッチリ断って止めを刺さなかったのかな」
「っ、だって…恭輔が会社を辞めさせられたらって思ったら」
「そんなの、出来る訳ないでしょう」
「…え」
「いくら一橋が社長の息子だからって、そんな理由で社員を解雇出来るほどままごと会社じゃないよ」
「…でも」
「大丈夫。杏奈はもう何も心配しなくていいよ」
「…恭輔」
「──全く…其処まで愚かだとは思わなかった」
「え」

ちいさくボソッと聞こえた恭輔の言葉がとても凄味があって一瞬ゾクッとした。

此処にはいない誰かに向けられた言葉だと思うと余計に身震いした。

(久し振りに恭輔の黒い言葉、聞いたかも)

いつもの優し気なほんわか恭輔も好きだけれど、たまに見せる悪い感じの恭輔も好ましく思ってしまっている私は体が熱くなるのを感じた。

「…ん?杏奈」
「あ…っ」

私の顔を覗き込んだ恭輔が何かに気が付いたようにゆっくりと其の表情を変えた。

「あぁ…欲情しちゃった?」
「!」

其の凄絶なる色っぽさは毒だった。

恭輔の獲物を捕獲する瞬間のような視線は私の体をより一層火照らせた。

「ははっ、とてもカラオケどころじゃないね」
「…ん」
「家まで──は持ちそうにないか。かといってこんな処じゃ思いっきり出来ないね」
「…」
「…ホテル、行こうか」
「っ」

耳元で囁かれた低い声に軽くイってしまいそうだった。

(はぁぁぁ…ダメ…!想像だけで私…)

【悪い恭輔】と【ホテル】という単語だけで色んな妄想が頭の中を駆け巡り、私の中は恥ずかしい程に濡れそぼってしまっていた。

「大丈夫?歩ける?」
「…う、うん…」

恥かしさを押し殺して私は恭輔に導かれるままカラオケルームを後にした。






「あぁ…これは辛かったね」
「あっ…ゃあん」

繁華街の中にあるラブホテルに入ってから直ぐにベッドに押し倒され着衣を乱された。

恭輔の前で大きく広げた脚の奥先をジッと恭輔に見られて顔から火が出るほどに恥ずかしい。

「今綺麗にしてあげるね」
「ひゃっ」

濡れ切ってしまっている私の其処に恭輔の舌が滑る。

其のあり得ない快楽に身悶えしてまともな声が出せなかった。

「ふっ…杏奈、何も考えないで真っ白になっちゃってよ」
「ぁ…は…ひぅ…っ」

ほんの数十分前まで思い悩んでいた事が私の中から綺麗さっぱり無くなってしまっていた。

ただ今は恭輔から与えられる極上の快感が私の全てを支配して、されるがままの悦びを感じていたのだった。

1jjn
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