「ねぇねぇ、美野里ちゃんって明日の夜、暇?」
「明日、ですか?」

お昼休憩にお茶を飲みに来てくれる北原さんと南さん。

他愛のない話をしている中で急に北原さんが話題を変えた。

「そう、もし暇ならさ歓迎会を兼ねた飲み会しない?」
「歓迎会?」
「 うん。つってもメンバーはこの三人だけど」

突然の誘いに戸惑いつつ、どう答えようと少し考えていると

「先生も呼んだらどうだ」
「え、先生?」

南さんが北原さんに向かって発した言葉に思わず喰いついてしまった。

「えぇ、僕らが懇意にしている人なんですけれど、ちょっと引きこもりみたいな生活をしているので機会があれば外に出る様に誘っているんですけど」
「先生かぁ~来るかな~酒の席に」
「美野里さんの歓迎会だと云えば来るんじゃないかな」
「あ!そっか。なんてったって十喜代ばあちゃんの孫だもんな」
「…えーっと、話が見えていないんですけど」

どんどん話を進めて行くふたりについて行けなくてつい口を挟んだ瞬間

カラン♪

「あ、いらっしゃ──」

来訪を告げる鈴の音に反応してドアの方を見ると

(あ)

其処には例の着物姿の東藤さんが立っていた。

すると

「先生?!」

素早く声を掛けたのは南さんだった。

(先生?)

「どうしたんですか先生、こんな時間にこんな処で」
「…なんだ、おまえらいたのか」

南さんに声を掛けられた東藤さんは一瞬怪訝そうな顔をしながら昨日と同じ窓際の席に腰を下ろした。

「えぇーなんでそんな離れた処座ってんだよ、折角顔合わせたんだからよ、こっちに来て駄弁ろうぜ!」
「煩いよ、北原」
「相変わらず顔色悪いなー先生よぉ、ちゃんと喰うもん喰ってんのか」
「其のために来たっていうのに…おまえらがいたんじゃ落ち着いて食事も出来ない」
「そんな事を云わないで先生。今、美野里さんの歓迎会について話しをしていた処なんです」
「…歓迎会?」

そうボソッと呟くと、東藤さんの視線が私を捉えた。

「すみませんが、何か食べるものを作ってください」
「え」
「昨日のピラフでいいです。昼飯、食べていないので」
「あ…は、はい」

呆けていた頭にピラフの三文字が刻印され、私は慌てて冷蔵庫に手を掛けた。

(えーっと…つまりどういう事?)

つまりは…東藤さんと北原さんと南さんは知り合い。

でも東藤さんはふたりの事をあまりよく思っていない?

そして南さんたち曰く東藤さんは『先生』と呼ばれている。

(うう~ん…よく解らない)

悩ましい関係性に頭を支配されながらも、私は注文を受けたピラフを作って行った。


「お待たせしました」

作ったピラフを東藤さんの前に置いた。

「ありがとう」

柔和な表情でお礼を云われ一瞬ドキッと胸が高鳴った。

(う~やっぱり東藤さんってイケメンだぁー)

そんな浮ついた気持ちを懸命に払い退け冷静になろうとしていると

「わぁお、美味そう!先生、ちょっと喰わせて」
「阿呆!誰が食べさせるか、これは俺のピラフだ」
「えぇーケチ!ちょこっとだって云ってんのによぉー先生って本当ケチで根暗で傲慢で鬼畜だよなっ」
「──おい、其れ以上汚い言葉を続けるなら其の耳の金属、引っ張って千切ってやるぞ」
「! す、すんませんっ、ほんのジョークだぜいっ」
「ふんっ」

「…」

東藤さんと北原さんのやり取りを呆けた顏で見つめていると、南さんが苦笑しながら話し掛けた。

「北原が騒がしくてすみません。あいつ、先生に罵られるのが好きみたいで先生に厭がられてもつい構ってしまって」
「えっ、罵られるのが好きって…?」
「まぁ、其れは追々」
「…?」

東藤さんの登場に、静かだったお茶屋は俄かに騒がしくなったのだった。

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