カラン♪ 

「いらっしゃいませ」

「はいはい、来ましたよ~」
「あんれまぁ、まーたわしらが一番乗りかいな」
「ははっ、空いていて席がより取り見取りだよ」
「美野里ちゃん、いつもの4つね」

「かしこまりました」

お店を開け始めた翌日、午前中の早い時間から祖母の馴染みのお客さんがぞろぞろやって来た。

どうやら皆さんは朝早くから畑仕事などをした後、朝食を食べたり一通り家事をこなして一息ついた頃、お茶を飲みがてらお喋りをしに此処にみんなで集まる──という流れの様だ。

(既にお店に来る事が一日のスケジュールの中に組み込まれている)

そんな嬉しい様な戸惑う様な、妙な気持ちを持ちつつもやっぱり心の中では有難いなと思うのだった。

「美野里ちゃん、手が空いているなら一緒にお喋りしないかぃ?」
「え」
「そうそう、美野里ちゃんの事、色々教えてぇな」
「…えーっと」

(其れはちょっと…厭な予感がする)

理屈ではなく本能的に(危険!)と感じた私は当たり障りなく

「すみません、お店の備品をまとめて発注をしなくてはいけなくて」

などど云い訳をして、カウンター内の小さなテーブルに置いてあったノートパソコンを起動させた。

(どうせまた結婚がどうのこうのと弄られるに決まっている)

昨日の雰囲気からして、このおばあちゃんたちの今現在の一番の関心は私の恋愛についてだろうというのが解ったので何としてでも其れをかわしたかった。

(其れに…皆さんに話せる様な恋愛、してこなかったからなぁ)

別に笑いを取る様な会話でもないだろうけれど、話していい経験とそうでない経験の線引きはちゃんと解っている。

(私の場合はアウトです)

なんて頭の中でぼやきながらパソコンを開いて行くと

(あ)

メールの受信トレイに新着マークがついていた。

(芽衣子からだ)

昨夜友人の芽衣子から電話が来て、提案された件について細かく書かれたメールだった。

(月に2回…4ページ構成…)

条件を確認し終えてまたはぁとため息をつく。

(副業としたらこんなものかな)

出版社に勤務する芽衣子から副業の誘いを受けた。

其れは私が此処に来るまで生業にしていた仕事の在宅バージョンだったけれど、意外と家計の足しになる報酬に心の中で手を合わせた。

(ありがたや~持つべきは編集者の友人様様!)

生活費に関する憂いが少し減った事に私は安堵したのだった。



カラン♪

「いらっしゃいませ」

お昼を少し過ぎた頃、お店にやって来たのは昨日のふたり組だった。

「ヤッホー、お元気?美野里ちゃん」
「北原さん、其れに南さん」
「名前、憶えてくれたんですね。ありがとうございます」

金髪ピアスの北原さんに真面目スーツの南さん。

見た目に個性が現れていて、直ぐに人物と名前がインプットされた。

「ご注文は?」
「おれ、いつもの」
「いつもの…って、昨日と同じもの?」
「そう、覚えているかなぁ~」
「勿論、アメリカンですよね」
「正解!さっすがぁ~」
「だって昨日の事ですよ?覚えていますって」
「覚えてくれていた事が嬉しいんだってーの」

気さくな北原さんとは直ぐに打ち解けて話す事が出来た。

一方で

「南さんも昨日と同じものですか?」
「いえ、今日は木曜日なので抹茶ラテを」
「…木曜日、なので?」
「えぇ、曜日で飲むものが決まっています。木曜日は抹茶ラテです」
「そう…ですか」

(ははっ…面白い人)

そんな事を思いつつも曜日別注文をメモしておかなくっちゃと思った私だった。

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