すっかり陽が暮れ、お茶屋再開初日は無事に終わりを迎えた。


「ん~こんなものなのかな」

店舗続きにある自宅の居間にてはぁとため息をつく。

初日の来客数11人。

売り上げは1万円にも満たなかった。

「そりゃそうだよね。ほぼ飲み物しか出していないし」


元々は亡くなった祖母が趣味の延長線上で始めたお喋り場のお店。

そんな店で儲けようという心構えでいた私が浅はかだった。


「んん…どうしたもんかな」

飲み物の値段を上げる事は出来ない。

多分其れをやったら祖母との繋がりがあった馴染みの集客は途絶えると思う。

お喋りついでにお茶を飲むならこの程度の金額まで出せる──という枠があると思うから、飲み物の金額に関しては祖母の時代からのままにしておきたい。

「となると軽食の数を増やすか…」

今現在の軽食メニューはおにぎり、サンドイッチ、ナポリタンの3種類のみ。

でもこの軽食が注文される事はあまりない。

「現に今日もサンドイッチひとつだけしか出なかったし」

しかし軽食の数を増やすとなると仕入れ額の増大が懸念される。

材料費や光熱費、其れ等を投入してまで売り上げが出るのかどうか──


「これは…一種のギャンブルね」

可笑しくもないけれどつい乾いた笑みがもれた。

家賃出費がないだけでもありがたいと思った。

(住む処はある、食事も贅沢をしなければ大丈夫)

出来るだけいい面を考えて気持ちを浮上させた。


「…」

元々最初から上手く行くとは思っていなかった。

まだ初日。

其れだけで全てを決めてしまうのは早急だと思っている。

(…とはいえ)

余りにも考えなしで此処まで来てしまったかな、とついぼやいてしまうのだった。


RRRRR♪


「あ」

机に置いていた携帯が鳴った。

慌てて手に取ると其処には友人の名前が表示されていた。

「もしもし?」
『あ、美野里?わたし』
「芽衣子、久しぶり」
『スローライフはどんな感じ?』
「スローライフって…まだ一週間も経っていないから」
『そっか。今日お店開けたんでしょう?どうだった?』
「んん~まぁこんなものかなって感じ」
『なに、歯切れ悪いね。大変だったの?』
「大変っていうか…まぁ、ある意味想像していたよりもうんと先行き不安っていうか」

学生時代からの友人である島岡 芽衣子(シマオカ メイコ)はなんでも話せる貴重な友人だ。

だから包み隠さず現在の状況、心境など弱音を素直に吐露する事が出来た。


『あぁ…やっぱり理想と現実って違うものなのね』
「まぁ、まだ一週間っていう短さもあるんだろうけれどね…なんだかひとりだと色々考えちゃって」
『そっか……あ、じゃあさ、ちょっと考えてみてくれない?』
「え、何を?」

躊躇いがちに言葉を発した友人の提案に驚きつつも、私の事を考えてくれているが故の其の発言が有難くて、私の不安な気持ちはほんの少しだけ和らいだのだった。

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