「えぇい!解った、もう解った!美兎が幸せになれると思った相手ならば認めざるを得ない!」

そんな父の言葉で晴れて私と彼は結婚前提のお付き合いが認められた。


「よかったわねぇ、美兎。お母さん、悠真さんみたいなイケメンならいう事ないわぁ」
「イケメ…ってお母さん、悠真くんは顔だけの男じゃないんだからね」
「えぇ、解っているわよ。色々苦労していそうだけれどそういう人の方が案外結婚後は身持ちが固いっていうしね」
「…別に浮気の心配はしていないけど」


重苦しかった雰囲気は一変して、娘の祝い事だと称していきなり盛大な夕食の時間になってしまった。


「ほら、飲みなさい。君、イケる口だろう」
「あー、すみません。彼女を送って行かないといけないのでアルコールは」
「酔ったら泊って行けばいい、部屋ならいくらでもあるぞ」
「いえ、明日も仕事があるので」
「真面目だなぁ~見かけによらず」
「よく云われます」

父はすっかり彼の事が気に入り、晩酌に付き合わせようと傍を離れなかった。

(凄い変わりようだなぁ、お父さん)

父は一度懐に入った人を家族同様に付き合う処があった。

だからきっと彼の事も私同様に付き合ってくれると思っている。

(悠真くんも私の家族を家族だと思ってくれるといいな)

彼の生い立ちの事を考えると其の気持ちは一層強くなった。


彼に家族を与えたい。


私と一緒に家族を作って増やして行って…


そして幸せになってくれればいいな──と。



「しっかし…君、僕の知っている奴によく似た面影をしているな」
「え」

いきなり父が彼の顔をまじまじと見てそんな事を云った。

「いや、こうして改めて間近で見れば見るほど、雰囲気といい顔立ちといい…似ているんだよなぁ」
「そうなんですか?」
「あぁ──そういえば君、名前何と云ったっけ」

(えっ!最初に紹介したのに覚えていないの?お父さん!)

キッチンで母と食事の支度をしながらふたりの会話に心の中で参加している私。

そんな父の失礼な質問にも彼は厭な顔ひとつしないで相変わらずの爽やかな笑みを湛えつつ応えていた。

「泉澤です。泉澤悠真」
「いずみさわ?!苗字まで一緒だ!」
「え」
「漢字はどう書く?泉に澤穂希の澤か?」
「はい…そうですが」
「おぉぉっ、こんな偶然ってあるか?!君、お父さんの名前は辰之じゃないか?」
「…いえ、あの…俺はシングルマザーの母だけで…父の事は」
「え、そうなのか?じゃあ違うか」

「ねぇ、其のたつゆきって人、お父さんとどんな関係なの?」

思わず私はふたりの会話に参加してしまう。

「あぁ、泉澤辰之は大学時代の後輩でな、俺が卒業するまでよくつるんでいた友人だ」
「大学の後輩?じゃあ写真とかあるの?」
「あぁ、あるぞ。見るか?」
「見せて!」
「…」

私は何故か妙な胸騒ぎがして思わずそう云ってしまったけれど、彼の顔を見るとなんとも形容しがたい複雑な表情をしていた。


(もしかしたら全然違うかもしれない)


父の後輩だという其の泉澤さんが彼の父親だという確証なんて全然ないかも知れないけれど、少しでも手がかりがあったら知りたいと思ってしまう。

ただ私がそう思っているだけで、彼にとっては有難迷惑のなにものでもないのかも知れないけれど…


「ほら、これだ」

数冊のアルバムを持って来た父から受け取ってパラパラとページを捲って行く。

「!」

今よりうんと若い父と、隣り合って映っている其の人は彼の面影があり過ぎるほどにあった。

(この人…絶対そうだ!)

彼女目線なのかどうか解らないけれど、私は一目見て其の人が彼の父親だと確信した。

其れほどに其の人は彼と似ていた。

「なぁ、似ているだろう?辰之もモテていてなぁ…先輩としては其れが腹立たしくもあったんだが、辰之は性格が良くてなぁ…モテる癖に派手な女遊びをしない生真面目な男だった」
「…」

ぼんやりと写真を眺めつつ、父の話を訊いている彼の表情が明らかに先刻と違っていた。

きっと彼も直感しているのだろう。

泉澤辰之なる人が彼の父親なのだろうと。

そう思うほどにふたりは似過ぎていたのだった。


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