GW明けの最初の出勤日。

「これ静岡のお土産です」
「おぉ、九重くん、実家静岡なの?」
「はい」
「おれの嫁さんの実家も静岡だよ。どの辺?」
「御殿場です」
「あぁ、あれだ、何とかってアウトレットがある処」
「近いですよ、実家からだと」
「いいねぇ~」

「…」

恭輔が庶務課のみんなに帰省土産を渡しているのを遠目から眺めている。

(相変わらずお爺ちゃんと孫みたいな光景だな)

なんて思いながら微笑んでいると

「佐東さんもどうぞ。帰省土産です」
「あ、ありがとうございます。頂きます」

恭輔から銘菓を受け取った時、ふと指先が触れ思わず数秒見つめ合ってしまった。

(うっ…なんでいちいちドキドキするかな)

勿論このお土産はふたりで選んで買ったもの。

知らない振りをして余所余所しく振る舞うもやっぱり心の何処かでこういうやり取りにときめいてしまう。

「佐東さんは何処か行ったのかな?」
「え…あ、私は友人とショッピング三昧でした」
「ほほぉ~なんだか想像しただけで華やかな空気が漂うね~」
「そういう課長は?家族サービスですか?」
「いやいや、もうボクとなんて一緒に出掛けてくれないよ。嫁と娘だけで出掛けてね、ボクは猫と留守番だよ」
「あらら、其れは寂しいですね」

其々がGWの過ごし方などを話しながらほんの少し休憩タイムに入っていた。

(いいなぁ…こののんびりした感じ)

「いいですね、この何ともいえないまったり感」
「え」
「ん?」

隣のデスクで銘菓を頬張りながら呟いた恭輔の言葉に反応した。

「今、私も似たような事思っていた」
「そうですか、気が合いますね」
「…」

他人行儀な話し方に満面の笑顔を見せられ、私はドキドキし過ぎて思わず目を逸らしてしまった。

(はぁ~本当心臓に悪い…)

恭輔との仲が深まれば深まるだけ、其の公私のギャップに悶えてしまう私だった。




「へぇ、よかったじゃん、いい人たちで」
「うん、愉しかったぁ」

其の日の昼休憩。

いつも通り志麻子と社食で昼食を摂りながら休みにあった事を話していた。

「しかし長男だったとはね…どうみても末っ子っぽいんだけど」
「其れって見た目だけで云っているでしょう?ああ見えても意外としっかりお兄ちゃん気質だったわよ」
「ほう~ひとりっ子の杏奈が素直に甘えられるのはそういう処があるからなのかね」
「…そうなのかな」

考えた事もなかったけれど、確かに兄弟がいない分甘えるとか甘えられるとかの境界線はよく解らない。

其れを知るための兄弟がいなかったから甘えた方がいいのか甘えさせた方がいいのか理解に苦しんだ。

でも恭輔と付き合うようになってから自分が甘えたなのだと知った。

一見立場が逆転して見える私たちの関係は私が恭輔を甘やかせている様に見えるのかも知れないと思った。

(でも実際は恭輔が私を甘やかすのよね…)

少しのギャップを知る度にいちいちときめく私はおかしいのかも知れないなとそっと心の中で呟いた。

「佐東さん」
「!」

後ろから話し掛けられ違った意味でドキッとした。

(この声…)

最早わざわざ振り返って確かめるまでもない程によく知った声に少し…いや、随分うんざりとしていたのだった。

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