「父さんは九重 浩輔(ココノエ コウスケ)母さんより10歳年上の52」

(10歳上…年齢的な事があって家族に反対されたのかな)

家族の紹介を続ける恭輔の話を訊きながら、つい先刻の駆け落ちの件が心に残ってしまっている。

「で、先刻の雅哉(マサヤ)と真己子(マミコ)は小学4年と3年」

(恭輔とは随分歳が離れているんだな)

一回り以上離れている幼い弟妹の事を思うと、何か其処にもドラマみたいな出来事があったのかも知れないとつい思ってしまった。

「九重商店は父さんが二代目なんだけど、実質今は母さんが取り仕切っているんだ」
「そうなの?」
「うん、父さんの本業は別の製菓工場の社員なんだ。この菓子屋だけじゃ生活がきついって事でこの店は母さん名義になっているんだ」
「…」

駄菓子屋さんって素敵な商売だと思ったけれど、其の内情を知れば意外と大変なのだと知ってしまった。

(…ん?でもそうしたら…)

今はお母さんが切り盛りしているこの駄菓子屋さんは、今後どうなるのかなとふと思った。

(恭輔は今の会社に就職しているし…雅哉くんがって事になるのかな)

そんな事をぼんやりと考えていると、ドタドタと二階から一階に足音が駆け下りて来た。

「勉強、終わったー」
「宿題済ませたよ!」
「あら、意外と早かったのね。よし、じゃあまずはおやつを食べなさい」
「はぁい」
「ねぇねぇ、恭兄、今日は泊まって行くんだろう?」
「あぁ、其の予定」
「やった!じゃあ一緒に風呂入ろうよ」
「あっ、あたしおねえちゃんと入りたい~」
「えっ」

一気に其の場が賑やかになり、私の考えていた色んな事はパッと消え去っていた。


其の後、釣りから帰って来た恭輔のお父さんにも紹介されて、お父さんが持ち帰った魚を中心にご馳走を振る舞われた。

「しっかし…本当綺麗な娘さんだなぁ~こぉーんな可愛い娘が出来るのかぁ~僕は幸せ者だなぁ」
「お父さん、まだ決まった訳じゃないですからね。ほら、可愛い娘ならもうひとりいるでしょう?」
「おぉーそうだった、僕の可愛い真己子ちゃ~ん」
「ちょ、お父さん、お酒臭い!近寄らないでェ」
「娘がつれない~恭子さん~慰めて~」
「はいはい、今日は飲み過ぎですよお父さん」

「…」

(恭輔のお父さん…想像以上に恭輔に似ている…)

恭輔のお父さんを目にした時、52歳という年齢を訊いていて其れなりのイメージをしていたのだけれど、其れが大きく裏切られた事に唖然とした。

恭輔のお父さんは見た目精々三十代くらいにしか見えない外見をしていた。

恭輔のお母さんは綺麗だけれど年相応の風貌だったから、正直お父さんの方が年下に見える程だった。

(これって…まんま遺伝じゃないっ!)

恭輔の童顔の理由がお父さんを見た事によって理解出来た気がした。

(でも…背の高さは違うかな。お父さんは背が高くて…ちょっとだけ恭輔よりカッコいいんだけど)

ぶっちゃけた云い方をすると、私にとっても充分恋愛対象の範囲に入ってしまう風貌だった。

(あぁ…恭輔のお母さんがお父さんの事を好きになる気持ち、解る気がする)

多分、恭輔のお母さんと私は好きな男性のタイプが似ているのだろう。

「ほら、杏奈さんもっと食べて」
「はい、いただいています──あ、お父さん、お酌します」
「お、お父さん?!う、嬉し過ぎる~こんな美人さんにお酌されるとか」
「…お父さん、わたしもお酌、してあげますわよ」
「え…なんか…顏が怖いよ?恭子さん~」
「お姉ちゃん、後であたしの宝物見せてあげるね」
「いいの?ありがとう」
「あ、おれもおれも!ねえちゃん、おれの秘蔵レアカード見せてあげる」
「雅哉くんカードゲーム好きなの?」
「あぁーズルい、あたしが先にお姉ちゃんと遊ぶんだからぁー」
「おれだって遊びたい!」
「はは…おまえたち…杏奈ばっかり取り合って。兄ちゃんだっているんだぞ」

とても和やかでいて賑やかな九重家での夕食はとても愉しかった。

まさかこんなに歓迎されるとは思ってもみなかったので少しこそばゆい位だ。

(なんだか私、幸せ者だなぁ…)

好きな人の家族ともこうやって仲良くさせてもらえる事がとても幸せで、ちょっと気を抜くと涙が零れそうになった。


そんな私にとってはいい意味で驚きと幸せとが沢山与えられた初めての恭輔の実家訪問は恙無く終わったのだった。

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