店舗続きの奥が住宅部分になっている恭輔の実家。

其の雰囲気は昔ながらのよき日本家屋という感じの和式仕様だった。

「其処、どうぞ。寛いでくださいね」
「ありがとうございます」

恭輔のお母さんが座布団を出し、座る様に促してくれる。

遠慮なく其処に座ると同時に両端に恭輔の弟と妹が寄り添って来た。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん、どうして恭兄ちゃんと付き合っているの?」
「え」
「本当本当、ねえちゃんくらい綺麗な人ならもっとイケメンゲット出来るじゃん!金持ちで社長で背が高い、えーっと芸能人みたいな男」
「あ、ははっ」

ストレートな物云いになんて答えようかと戸惑っていると

「こら、おまえたち、俺の杏奈に近寄り過ぎ。はい、どいたどいた」
「わぁっ」
「ちょ…退けんなよ、恭兄ぃ」

手慣れたように弟妹をポイッと退けて、ちゃっかり私の隣に座った恭輔。

(なんだか…其のまんまなんだなぁ)

ストレートな対応や行動は私といる時と同じく、家族といる時の恭輔がいつもと変わらずにいた事が嬉しかった。

「ほらほら、雅哉、真己子、宿題やったの?休み中にやる勉強、あったでしょう?」

恭輔のお母さんがお茶とお菓子の乗ったお盆を抱えながら居間に戻って来た。

「あった…けどぉ」
「今日ぐらいしなくてもいいじゃん、折角恭兄が帰って来たんだからー」
「宿題済ませてから思う存分遊んでもらいなさい」
「…はぁい」
「ちぇ…しょーがないなー」

お母さんの言葉を受け入れて、雅哉くんと真己子ちゃんは渋々階段を上がって行った。

「杏奈さん、着いた早々騒がしくてごめんなさいね」
「いえ、私ひとりっ子ですから弟や妹がいるのが羨ましくて…にぎやかで愉しいです」
「あら~よかったわね、恭輔。杏奈さん、雅哉や真己子にとっていいお姉さんになってくれそうで」
「まぁね」

(え)

ごく自然な会話だったからつい聞き流してしまったけれど、今の会話は

(なんだか…結婚する事を認めてもらっているような…)

そんな感じが窺えて少しドキドキしてしまった。

「ところで父さんは?今日、休みじゃなかったの」
「あぁ、今ね釣りに行ってるの。恭輔が帰って来るっていうから釣れたての魚振る舞うんだってはりきってね」
「へぇ、下手の横好き、まだ続いているんだ」
「あんたが家を出て行ってから多少腕を上げているわよ。5回行った内2回は何らか釣って来るもの」
「はははっ、まだそんな勝算なんだ」

恭輔とお母さんが話しているのを私がふんふん訊いていると、恭輔が何かに気が付いたようにハッとした顔をした。

(? どうしたんだろう)

「杏奈、ごめん。俺、ちゃんと家族の事紹介していなかった」
「…あ」

(そういえばそうだった。そんな事を忘れるほどに既に馴染んじゃっていたけれど)

「全くあんたは相変わらず抜けているんだから」なんてお母さんに云われながら、恭輔は私に家族の事を話してくれた。

「まずは母さんから。九重 恭子(ココノエ キョウコ)42歳」
「こらっ、歳の事は云わなくていい!」

ペシンと頭を叩かれた恭輔を見ながら私は驚いた。

(えっ、42?!わ、若いっ)

恭輔の年齢から逆算して考えると、恭輔を20歳前後で産んでいる計算になる。

「あの、ご結婚、早かったんですね」
「え」

思わず口に出してしまった私の言葉に、一瞬お母さんはキョトンとしたけれど、直ぐにニッコリ笑って

「えぇ、お父さんとはね出逢ってすぐに恋してすぐに結婚しちゃったから」
「凄い…情熱的」
「情熱的…ねぇ、まぁ駆け落ちするくらいなんだからそうなんだろうね」
「え、駆け落ち?!」

続く恭輔の言葉に激しく反応してしまった。

(駆け落ちって…ドラマや小説の中にしか存在しないと思っていた)

「わたしが若かったって事もあったんだろうけど、兎に角親兄弟に反対されてね…お父さんと一緒になるには駆け落ちするしかなかったの」
「ふぁ…凄いですね…愛し合っていたんですね」
「やだぁもう、わたしの恋バナなんていいのよ、もう」
「そうそう、其の話、もう何十回と訊かされているから、耳にタコ」
「あら、まだ十何回しか話していなかった?じゃあもっと訊かせなくっちゃ」
「止めて!もうお腹いっぱいっ」

また始まった恭輔とお母さんの漫才みたいな会話。

其れを微笑ましく訊きながら思うのは

(そっか…そんな情熱的な恋愛の末に恭輔は生まれたんだ)

何故かそう思うと胸が熱くなって幸せな気持ちになったのだった。

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