先刻から語られる今ひとつ実感の湧かない不思議な話の数々。

(だけど嘘を云っている様にはみえない)

なるべく私に解り易く話そうと言葉を選んで話してくれている言守さんをみていると、語られている世界は本当に存在するんじゃないかと思い始めていた。


「──というような概要なのですが…お解り頂けたでしょうか」
「はぁ…まぁ、何となくですけど…兎に角言守さんはとても偉い人なのだと、そういう訳ですね」
「いいえ、偉くなんてありません。ただ少し人とは違う力を持って生まれ、其れを世の人に正しく使ってもらえるように努力しているというだけに過ぎません」

(いや、そういう考え、偉い人ならではですよ)

私の心の中に言守さんという人が徳の高いお坊さんか何かみたいな存在になりつつあった。

(というか!)

其処で私はようやく自分自身の今の姿に目が行き、思い出したかのように焦った。

「そ、そういえば!私…なんで裸でいたんですかっ」
「あぁ…其れは…」

何故かポッと頬を赤らめた言守さんが視線に映った。

(なんで…言守さんが赤くなってるのよっ)

とてもよくない予感がして私こそが赤くなった。

「古世美さんが僕の伴侶である事を…確信したかったんです」
「は?…確信?」
「はい。言守家当主の妻となる女性は尊き存在。当主の為だけに存在する清らかな女性である必要があります」
「…」
「つまり……生娘である事が前提にあります」
「! き、生娘って」

(つまり処女…って事、だよね?!)

意味を知って益々カァと熱くなった。

(……え、って事は…何?)

「其れって…き、生娘であるかどうかって…裸でいたって事は…私…」
「申し訳ありません、見分、させていただきました」
「?! け、けんぶんっ、けんぶんって何!っていうかそんなのどうやって解るって」
「秘なる場所を直に視れば解るのです」
「は…?秘なる場所って…直に視ればって…」
「…」
「~~~っ!!」

言守さんの無言が語らずも全てを物語っている様で、私はあり得ない程の羞恥を感じた。

(嘘…嘘嘘嘘嘘嘘嘘、嘘でしょう───??!)

何故か意識を失ってしまっている間に、逢ったばかりの男の人に大事な処を見られてしまっていただなんて…!

「言守さんっ!あ、あなたねぇ」
「本当に申し訳ございません──ですが全てはあなたを僕の伴侶として迎えるために必要な事だったのです」
「っ、伴侶って…私…そんなのには」

余りにも身勝手な事を云われていると思った。

(確かに言守さんはカッコいいし礼儀正しいし優しい──けれども!)

「お願いします。どうか僕の妻として言守家に輿入れしてください」
「!」

目の前で深々と土下座されてギョッとしてしまう。

「ちょ…頭を上げ──」
「出逢いは突然でしたが」
「…え」
「僕とあなたの出逢いは突然でしたが…でも僕にとっては必然で、そしてきっと古世美さんにとってもこの出逢いが運命だったと感じる事が出来る時が来ます」
「…」
「あなたなんです…僕の妻になるのは…そう定められているのです」
「…そ、んな…」

突然降って湧いた出来事に、はいそうですか──と安易に受け入れる事なんて出来っこない。

其れにそんな大層な家柄に私みたいな庶民でなんの取り柄もない、ガサツで女らしくない、作法とかしきたりとかそういった事を知らない無知な女が嫁入りしていい訳がない。

(無理、だよ…)

考えれば考える程に気持ちが暗くなって行く。

今まで生きて来た中で、こんなにも私を求めてくれたのはこの人が初めてだった。

短期間、男の人と付き合った事があるにはあったけれど、いずれも深い仲に進展する前に別れてしまっていた。

(きっと山登りばかりする私がいけないんだ)

そんな風に考えた事もあったけれど、山登りが出来ない位なら彼氏なんて要らないと思ってしまう私だったから余計にこの状態が貴重なものに思えてしまうのだった。

古-イニシエロマンス-恋
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