目が覚めた時、広がっていたのは全然知らない風景だった。

しかも何故か大きくなっている体に知らない男の人の存在。


(一体どうなっているの!?)
 

「助けて…お父さん、お母さん…陽生ちゃんっ!」
「!」

私が『陽生ちゃん』と叫んだ瞬間、グッと腕を引っ張られた。

「何云ってんだよ、なんで陽生に助けを求めているんだよ!」
「っ」
「俺がいるだろう!俺が紅実を助けてやる、だから陽生の名前なんて呼ぶんじゃない!」
「…あ、陽生ちゃんを…知っている、んですか」
「……は」

知らない大人の男の人が陽生ちゃんを知っている、という事で少し気持ちが落ち着いて来た。

「私…ゆ、誘拐、されたんじゃない、んですか」
「…誘拐だなんて…何処からそんな発想が」
「じゃあ、此処は何処なんですか」
「何処って家に決まっている。俺と紅実の」
「……は?」

(何を…云っているの、この人)

「え、えぇっと…肝心な事を訊いていませんでしたけど…あなたは誰ですか?」
「──は?」
「先刻からおかしな事ばかりが起こってて…私、なんでこんな体になっているんでしょうか」
「…」
「あぁ…思い出せない…昨日…有紗と万福堂のあんみつ食べた事は覚えているのに…」
「…おい、紅実?」
「っていうかなんで先刻からあなたは私を呼び捨てにしているんですか?誰なんですか、本当にもう」
「…」

訳が解らないのは私の方なのに、何故か目の前の男の人が訳が解らない、という顔をしていた。

(…ん?)

落ち着いてまじまじと其の男の人の顔を見れば、何処かで見た事があるような気がした。

(あれ…この顔…なんか何処かで見た事が…)

そう思えば思うほどに何故かムカムカとした気持ちが湧いてくる。

(なんだろう…見ていると段々腹が立って来る)

そんな事を考えていると、男の人が立ち上がってキャビネットの上に置かれていた写真立てを無言で私に差し出した。

「なんですか、これ」

受け取った写真立ての中を見ると、目の前の男の人と綺麗な女性が仲睦まじく映っている写真が入っていた。

「…これは…あなたと…彼女さん、ですか?」
「…」

次に男の人は手鏡を差し出した。

「なんなんですか、先刻から──」

受け取った手鏡を見て絶句した。

鏡の中に映っている私の顔が、写真立ての中の写真に写っている女性にそっくりだったから。

「え…え、え、えぇぇぇぇっ?!な、何…なんで、なんで私…顔が変わっているの?!」
「…変わっているんじゃなくて、元々其れが君の顔だよ」
「嘘っ!こんな…大人の女の人みたいな顔なんて…どうして?!なんでいきなり顔まで変わっちゃっているの?!」
「…ねぇ…紅実は今、いくつなの」
「は?」
「歳は、いくつ?」

男の人が表情を曇らせながら訊いた質問に私は戸惑いながら答えた。

「15…ですけど」
「~~~っ!」

其の瞬間、男の人が鬼みたいな形相になって慌てて部屋から出て行った。

「な…なんなのっ」

ひとり残された私は、もう一度手元にある手鏡を覗き込んだ。

(えぇぇ…何で私、いきなりこんな顔になっているの…?)

薄っすらではあるけれど、自分の顔だろうなというのは解る。

ずっと気になっていた口元の小さなホクロも同じ位置にあったし、少し逆睫毛になっている処も同じだった。

(これって…大人の私の顔…?)

だとしたらあの写真に写っていたのは、大人の私と…

(彼──なの?)

先程まで目の前にいた男の人に少し胸がときめいた私だった。

ままごとマリッジ
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