一瞬頭の中が真っ白になり、そして目の前が真っ暗になった───気がした。


「おい、持って来たぞ」
「!」

トンッと背中を叩かれ我に返った。

徐に振り返ると其処にはいつも通りの朔の姿があった。

「ん、どうした紅実」
「え…あ、ううん、どうもしないよ」

少し頭を振って朔から受け取った包みを陽生ちゃんに差し出した。

「これは何?」
「あのね…結婚式の時に撮った写真なんだけど、私と朔以外の…集合写真も撮ったから陽生ちゃんにも渡したくて」
「式に出られなかったから気を使ってくれたの?」
「そんな大層な感じじゃなくて…其の懐かしい顔もあったりするから」
「懐かしい顔って」
「覚えている?ほら小学校と中学校が一緒だった南有紗」
「あぁ、南さん、覚えているよ」
「彼女も式に来てくれて…写っているから」
「そうか、そういう意味での懐かしいね──ありがとう、紅実。じっくり見させてもらうよ」
「うん」

にっこり笑ってくれた陽生ちゃんを見て用意しておいてよかったと思った。

「陽生、これからは頻繁に連絡しろよ。おまえの近況、いつも小路のおばさんから訊いているんだからな」
「あぁ、母さんとも交流してくれているんだ、ありがとう」
「ご近所さんなんだから当たり前だよ、陽生ちゃん」

朔の言葉に私も加勢してもっと連絡を取り合おうと提案した。

「うん、了解。出来る限り連絡するように心がけるよ」
「時間があったらまた遊びに来てね」
「勿論──いつか紅実の元に帰って来るから」
「…」

一瞬陽生ちゃんの顔が今まで見た事がない表情になった。

だけど其れは本当に一瞬の事で今ではどんな顔だったのか覚えていなかった。

(…なんだかおかしいな、私)

そんな事を考えながらも私と朔はタクシーに乗って去って行く陽生ちゃんを其の姿が見えなくなるまで見送ったのだった。



「はぁ…帰っちゃった」
「なんだよ、急に」

陽生ちゃんのいなくなったリビングはやけにガランとした感じがした。

ソファに座っていた私の隣に座った朔がグイッと肩を寄せた。

「ん?どうしたの」
「なんか…色々複雑」
「何が?」
「陽生を見る紅実の顔や態度に」
「…ひょっとして…やきもち妬いちゃった?」
「あぁ」
「…」

相変わらず素直に気持ちを吐露する朔に笑みが零れた。

「なんだよ、なんで笑う?」
「だって…やきもちなんて妬く必要ないのに」
「…」
「そりゃ、久しぶりに逢った陽生ちゃんにドキッとした事は認めるけれど」
「ドキッとしたんだ、認めるんだ」
「ごめん…でも私にはどうしたって朔が一番だよ」
「…」
「私は朔が一番好きで、愛していて…自慢の旦那さまだよ」
「っ!」

そっと覗き込むように朔の顔を見れば、ほんのりと頬を染め何ともいえない表情をしていた。

「…朔?」
「はぁ…何、そんな嬉しいことばかり云って…なんか誤魔化されている様な」
「心からの言葉だよ」
「~~~」

抱かれている肩がグイッと朔の方に寄せられ、そして少し潤んだ朔の瞳が間近になった──と思った瞬間、唇にチュッとキスされた。


──其の瞬間


「?!」

いきなり頭の中が真っ白な景色になりパァンと何かが弾けたような気がした。

「きゃっ!」
「?! 紅実っ」

思わず仰け反ってしまった私は割れる様に痛む頭を抱えて其の場に倒れ込んでしまった。

(何…この…頭の痛みっ)

ズキンズキンと脈打つような痛みに耐えきれなくなった時、私は意識を失ってしまった。


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