『意識のなくなった古世美さんを頂きました』


(其れって…)


『大層美味で御座いました』


其れって…其れってつまり…私…は


(えっちな事をされたって事ぉぉぉぉぉ───?!)


「そ…そんなっ…嘘、でしょう?」
「はい、嘘です」
「?!」

涙ぐんでいた私の耳に入った言葉が激しく私の中に突き刺さった。

「すみません、嘘をつきました」
「…」
「蔦留を騙すために嘘を──ついてしまいました」
「いったい…」
「え」
「あなたは一体…何者なんですか?」
「…」

私はただ見ず知らずの、行き倒れていた人を見つけて介抱して、そしてご飯をご馳走するために家に招いただけだ。

まだほんのニ、三時間の出来事だったはず。

「先刻の人といい…あなたは一体」
「全てお話します」
「…」
「全てを話し、そして納得してくださったらあなたは僕のものになってくれますか?」
「は?!」
「僕はあなたに逢いに来ました。というか、あなただった。だから僕はあなたに名前を告げました」
「…」

(また訳の解らないを)

「あぁ、失礼いたしました。話がどんどん飛んでしまいますね」
「そうですね」
「きちんとお話します。だからとりあえず最後まで訊いてください」
「…解りました」

こくんとひとつ頷いて、服を纏った私は言守さんの話を真剣に訊いた。


「僕の家は大昔から朝廷や幕府といった国の重要機関と深い関わりをもつ役目を生業として来ました」
「なりわい?」
「仕事の事です。僕の家は代々浄天眼という能力を持った一族でした」
「じょうてんがん…?」
「千里眼、透視能力──と云ったらお解り頂けますか?先を見通す力、つまり預言者みたいな力を持った家だったんです」
「透視!つまり超能力って事ですか?」
「そうなのですかね…昔の事過ぎて其の始まりは解らないのですが、家に伝え訊くところによれば、言守家の始祖は、朝廷に仕えていた陰陽師と彼が契約していた物の怪との間に生まれた子であったという伝えがあります」
「陰陽師…物の怪…」

(漫画だ…漫画の世界の話だっ)

言守さんから訊かされる話はまるで映画か小説の様な話で、真剣に訊いていた気持ちが徐々に崩れていきそうな気がした。

「始祖には幼少時から先を見通す力があり、其れを使って朝廷での地位を上げて行ったそうです。しかし其の強過ぎる力を悪用されかけた事をきっかけに、始祖の存在は表舞台から消される事になりました」
「消されるって…」
「始祖一族の命を守るために真の権力者が有する陰の存在としてある様に定められたのです」
「…」
「以来始祖の末裔である言守家は現代も尚、政治経済界を裏から支える生業を担っているという事です」
「…其れはじょう…えっと…透視能力で何か偉い人に助言したり占ったりするという事ですか?」
「えぇ、簡単に云えばそういう事なのでしょう」
「…はぁ」

(なんだか壮大過ぎて私の頭ではついていけない処多しだなぁ)

余りにも荒唐無稽の話で、私は何か作り物のあらすじを訊いているかの様な気持ちになっていた。

「解っていただけたでしょうか?」
「えぇ…っと…はい。つまり言守さんは其の代々続く影の存在の家の人って事なんですね?」
「まぁ、色々端折るとそういう事になります」
「じゃあ言守さんも何かそういった能力があるんですか?」
「まぁ…一応は」
「ふぁ~凄いですね!透視能力!」
「…そんなに大した事でも喜ぶような事でもないのですけれどね」
「…」

事情をよく知りもしない私がはしゃいだ姿に一瞬、言守さんは哀しそうな表情をした。

(もしかして私…無神経な事を云った?)

何故かそんな気持ちになって申し訳なく思ってしまった。

古-イニシエロマンス-恋
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