何故顔を赤らめ視線を外したのか──其れは私が私自身を見て判明した。

「……へ?!」
「あぁ古世美さん、僕以外の者に其の柔肌を晒してはいけません」
「な…な、なっ…」
「あなたの裸体を見てもいいのは僕だけですよ」
「~~~っ」

(な、何を云っているの?!この人ぉぉぉ──!!)

そう、何故か私は裸で布団に寝かされていた。

(なんで?なんでいきなりこんな展開になっているの?!というか──)

「あ、あなたは誰なんですかっ!」

そう云いながら指したのは正座をしたままの知らない男性。

掛け布団を被った私の方をようやく向いた其の人は何故か恭しく私にお辞儀した。

「大変ご無礼を致しました、御新造様」
「…は?ご、しんぞう…さま?」

(何、其れ)

「蔦留、まだ早いですよ、其の呼び方は」
「いえ、もう既に真名のやり取りをなさった上に…珠合わせもなさったとなればもはやこのお方は──」
「ちょ、ちょっと待ってください!先刻から何訳の解らない事を云っているんですか」

余りにも訳の解らない言葉を発するものだからいい加減苛々が募った。

「…睦月様、これは一体」
「あぁ、彼女には何も云っていませんので何も知らないのです」
「───は?」
「僕の事を何も、えぇ、なぁんにも知らないのです」
「はぁぁぁ?!そ、其のような状態で…真名のやり取りと…珠合わせをなさったと…?!」
「はい」
「!!! な、なんとぉぉぉぉぉ──!!」

(もう、この人煩いっ)

──というか、先刻言守さんの事を『むつきさま』って云った?

「あの…名前ってむつき、じゃないですよね」
「古世美さん」
「っ!」
 
言葉を発する私の唇にそっと言守さんの人さし指が押し当てられた。

其の瞬間、云いたかった言葉が何だったのか忘れてしまった。

(…あれ?何を云いたかったんだっけ…?)

何かを云わなくては、訊かなくてはと思っていた思考が突然消え失せたような気がした。


「とりあえず、蔦留は一旦帰ってください」
「は?睦月様を置いて…ですか」
「えぇ。私は彼女と話す事がありますので──察してください」
「…承知いたしました。ではわたしは一足先に戻り、御新造様をお迎えする支度に取り掛かります」
「家の者には」
「わたしから…まぁ、ご納得はしていただけないかも知れませんが」
「いつもすみませんね、蔦留」
「いえ…わたしは睦月様の式で御座いますから。ではこれにて──御新造様も、失礼いたします」
「……はぁ」

丁寧にお辞儀をして『つたる』と呼ばれた人は音もなく部屋から出て行った。

「…」

言守さんとふたりきりになって静かな空間が漂った。

しばらく茫然としていた私だったけれど、急にハッとして我に返った。

「あの、言守さん」
「はい」
「…私たち…ご飯を食べて、いましたよね?」
「はい、頂きました」
「…其れから…どうしたんでしょうか?」
「其れから、ですか」
「はい…私、なんだか急に意識が無くなってしまって…今、どうして…は、はっ…裸でいるのかって」
「頂きました」
「…は?」
「意識のなくなった古世美さんを頂きました」
「…………」







(何…を、云っているのぉぉぉぉ───?!)

「大層美味で御座いました」
「~~~っ」

にっこりと微笑みながら手を合わせて『美味』と云った言守さんが余りにも清廉潔白な顏だったので、酷い事をされたのだとすぐには思えなかった私だった。

古-イニシエロマンス-恋
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