<運命の時はすぐ其処に───>


そう、視得(ミエ)たから行動を起こした。


だけど初めての世界は思った以上に雑多で目まぐるしく僕を翻弄させ、一気に持てる使力(シリョク)を消耗させた。



『ちょ…だ、大丈夫ですか?!』

……ん


『あの、もしもーし…大丈夫ですか?!』


…ん……んん…


『ど、どうしよう…やっぱり救急車…呼んだ方がいいよね』


…きゅうきゅう…しゃ…?



(──其れは、拙い)




「け、携帯…携帯、何処にあるのっ」

私は鞄をひっくり返して携帯を探す。

探し当てた携帯を手に私は震える指で救急車を呼ぶための操作を始める──が

「呼…ばない…で」
「え」
「きゅうきゅう…しゃ…呼ばない、で…ください」
「!」

掠れた声が発せられて私は慌ててうつ伏せの人の間近まで寄った。

「あの、大丈夫ですか?何処が痛いんですか」
「…いえ…痛くは…ない、です」
「じゃあ…あの」

うつ伏せのままで発せられる声は若い男性の声。

安易に体に触る事を躊躇っていると

「すみません…ご心配をおかけしました…」
「っ」

徐に起き上がった男性が其の場で正座して顔を上げた。

(わっ…!カッコいい)

日本人らしい、和風美男子──という表現が当てはまりそうな其の端正な顔に思わず見惚れてしまった。

「…あの」
「! あ、わ、私は単なる通りすがりの者で…なんか…大きな音がしてビックリして」
「…音?」
「えぇ…多分お腹の──」

言葉途中でグゥゥゥゥゥ~~ッッとまた聞こえた。

「…あ」
「えっと…其の音が聞こえて…人がいるんじゃないかと思って探していたら…」
「あぁ…僕を救ってくださったのですね」
「救ってって…そんな…」

(なんか…なんかこの人…不思議)

話せば話す程になんだか浮世離れしている雰囲気が滲み出ていて、普通に話し掛ける事がとても悪い事の様な気がした。

「今の音は僕のお腹から出た音のようです」
「お腹、空いているんですね」
「空く?お腹が空く…とは」
「? えーっと…お腹が空いているから音が鳴ったんですよね」
「…お腹が空く…から音が出る」
「ご飯、食べていないんじゃないですか?」
「…そういえば…まる一日ほど食べていないかと」
「えっ!なんで」
「なんでと云われても…食べるものがないから食べていないんでしょうね」
「…」

(えーっと…この人は大丈夫な人、なのかな?)

なんだか益々不思議な雰囲気がまとわりつく其の男性に怪しさは感じたけれど、決して悪い人とは思えなくてつい

「あの…よかったらご飯、食べますか?」
「…え?」
「私の家、すぐ其処なんです。もしよかったらご馳走しますけど」
「…ご馳走」
「あっ、ご馳走といっても豪華な食事という意味ではなくてですね、普通のご飯なんですけど」
「宜しいのですか?」
「は?」
「ご迷惑ではありませんか?」
「いえ…ひとり暮らしなので迷惑という事はないんですけど…」
「ひとり暮らし?あなたの様なか弱い女性がひとりで?なんの罰ですか」
「……へ?」

(か弱い?罰?)

なんだか変な事を云う人だなと思いながらも何故か知らない人という恐怖心はなく、こんな変な状況なのに素直に受け入れてしまっている私がいたのだった。

古-イニシエロマンス-恋
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