「十六澤朔さん、あなたはこの女性を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬い慰め助けて変わる事なく愛する事を誓いますか」

「はい、誓います」

「真柴紅実さん、あなたはこの男性を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬い慰め助けて変わる事なく愛する事を誓いますか」

「はい、誓います」


 (やっと…やっと此処まで辿り着いた)

長かった私と朔の道のり。

幼い日に出逢ってから恋をして結ばれるまでの過程には色んな事があったけれど…

でもそんな道のりも今日という晴れやかな瞬間に全てがいい想い出として塗り替えられてしまった。


「では誓いのキスを」

神父様の言葉を受け朔がゆっくりと私のベールを上げる。

「…紅実」
「…」

朔の優しい声と共に視界がクリアになり、愛おしい朔の顔が鮮明に私の目に映った。

(あぁ…好き…大好き)

心からそう思える人と結ばれるなんて、私はどれだけ幸せ者なのだろうと涙が出そうになった。

「誓いのキスをするのに泣いたらダメだろう?」
「…うん…そうだね…」

唇が近づきながら朔が囁く様に云った言葉に微笑む。

「紅実、愛している─── 一生大切にするから」
「私も…一生愛し続けます」

誓いのキスを交わした瞬間、教会の鐘が高らかに鳴り響き、列席者から温かな拍手が送られた。


結婚する事に対して少し悩み戸惑っていた気持ちを朔が軽くしてくれた。

結婚はひとりでするものじゃない。

ふたりで作り上げて行くもの。

其の全てが先刻の誓いの言葉の中に込められていた。


「おめでとう、紅実、十六澤くん!」
「有紗」
「ブーケ、こっちに投げてー」
「ははっ、南は相変わらずだな」
「うん…本当に」

結婚式に招待した友人数人の中に有紗の姿があった。

小学生の時からの浅い付き合いだった友人は、いつの間にか親友という肩書にランクアップしていた。

遠く離れてしまった陽生ちゃんの事を未だに想い続けている意外に一途な性格だった事には流石の私も頭が下がった。

(有紗も幸せになって欲しい)

そんな願いを込めてブーケトスに臨めば、有紗は期待通り私の投げたブーケを見事キャッチしていたのだった。


こじんまりとした式だったけれど、みんなに祝福されて笑顔の溢れるとてもいい式を送る事が出来たのだった。




「幸せ者だな、俺たち」
「…うん、本当にね」

式を終えた私たちはこれからふたりで住む新居で寛いでいた。

新婚旅行は私と朔の仕事の折り合いを見て、まとまった休みが取れた時に行こうと決めていた。

式を挙げ、入籍を済ませ、私は正真正銘朔の奥さんになり── 十六澤紅実なった。


「朔、お風呂湧いているから先に入って」
「は?何云ってんの」
「え」

不意に腕を掴まれた朔の掌は少し熱かった。

「結婚初夜にひとりで風呂に入れって…酷い事を云う嫁だな」
「えぇ、だって初夜っていったって私たちそんなに初々しいものじゃ──」
「紅実って淡泊」

少し拗ねたような口調で云いながら朔は私をギュッと抱きしめ、其のままお姫様抱っこをした。

「! ちょ、ちょっと」
「違うだろう、今までとは」
「…」
「俺は紅実の夫で紅実は俺の妻」
「…」
「神様だって認めた正真正銘の夫婦だ」
「……うん」
「そんな記念すべき日にイチャイチャしないでどうする」
「っ、イチャイチャって…!」

朔の言葉にじんわりと酔っていた処に、いつもの調子の言葉が続いたから気持ちが素面に戻ってしまった。

「しよう?イチャイチャ」
「~~~もう…」

心の底から私を求めている事が解り過ぎる程に色っぽい眼差しを向けた朔に私もすっかり溺れてしまった。

(どうしよう…凄く好き過ぎて…おかしくなりそう)

初々しい花嫁ではない私は貪欲に朔を求める気持ちを隠しておく事が出来なくなっていた。

素直な気持ちのまま朔に身を委ねると、朔は今日一番の幸せそうな顔を私に見せてくれたのだった。

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