GW初日という事もあって高速道路は勿論、何処も彼処も人でいっぱいだった。

其のせいで恭輔の実家に着いたのは出発から4時間後だった。

「んーやーっと着いたぁ」
「運転ご苦労様、疲れていない?」
「平気。杏奈が色んな事してくれたから」
「っ」

(渋滞中の車の中で繰り広げられたあんな事やこんな事は決して口には出せない!)

思い出してポッと顔が熱くなった私の手が不意に引かれた。

「あ」
「家、こっち」
「うん」

恭輔の家には駐車場がないという事で、家の近くの月極駐車場で借りている九重家のスペースに車を止めていた。

恭輔と手を繋いで歩く風景は見た事のないものだった。

だけどなんだか胸が詰まってしまう。

(此処で恭輔は育ったんだなぁ)

そんな事を考えている内に「着いたー此処が俺の家」と恭輔が立ち止まった場所を見て驚いた。

「え…此処?」

其処は木造の古い店舗だった。

見上げた看板には【九重商店】と書かれている。

「恭輔の家ってお店屋さんだったの?」
「うん」
「へぇ…そうなんだ」

ちょっとした驚きを感じているといきなりお店の引き戸が開いて中から元気な声がした。

「あー恭兄ぃ帰って来たー!」
「恭兄ちゃんーおかえりー」
「おぉ、雅哉に真己子ただいま」

(え…恭兄って事は…)

恭輔に群がる小学生くらいの男の子と女の子を見つめていると急に男の子と目が合った。

「なっ…!」
「あ、あの…初めまして、私──」
「な、ななな…なんだよ、この美人のねぇちゃん!」
「へ」
「わぁ!綺麗な人ぉ~もしかしてこの人が恭兄ちゃんのお嫁さん?」
「……へ?」

自己紹介する間もなく何故か私の周りを騒ぎながらクルクル回っているふたりに何も云えなくなってしまう。

どうしたものかと思っていると

「こぉら!店先で騒ぐんじゃないの!」
「わぁーごめんなさーい」
「怒らないでー」

更に大きな声を発した人がお店の中から出て来た。

だけど其の顔を見た瞬間、胸がドキンと高鳴った。

(凄い!恭輔そっくりの顔っ)

「ただいま、母さん」
「あぁ、お帰り恭輔──まぁ、もしかして其方が」

恭輔から私に視線を移した其の女性はにっこりと笑った。

「まぁまぁ…本当綺麗なお嬢さんだこと。本当に恭輔の彼女なの?」
「! あの…私、佐東杏奈と云います。恭輔、さんと…あの…お付き合いさせていただいています」
「あら、本当なのね。どうしちゃったの?あなたそんな美人さんなのに恭輔みたいな子どもチビでよかったの?」
「おーい、母親が息子貶めてどうするんだよ」
「息子だから云ってあげてるんだよ。本当にもうあんたは似なくてもいい処ばかり似ちゃって」
「今そんな話しないでくれよ」

「は…ははっ」

突然始まった親子の会話に気後れしそうだった。

「さぁ、杏奈さん中に入って。狭くて古い家だけど我慢してね」
「いえ、お邪魔します」

おずおずとお店の中に入ると

「わぁ」

決して広くない店内には昔懐かしい駄菓子が沢山陳列されていた。

「お店、駄菓子屋さんだったんですね」
「そうなのよ、商店ってついているけどね昔ながらの駄菓子屋なのよ」
「わ、懐かしい。これ、ちいさい時大好きでした」
「あらそう、じゃあはい」
「え」

懐かしい駄菓子を見つけて眺めているとそっと手渡された。

「来訪祝いにひとつあげる」
「えっ、いいです。私そんなつもりで──」
「いいのよう。ひとつだけしかあげないんだから。貰っておきなさい」
「…あ、ありがとう、ございます」
「そうそう、素直な子は好きよ、わたし」
「…」

なんだか少しだけ感じていた緊張感がこのやり取りで薄らいだ気がした。

不意に視線を感じて見ると、其処には私を柔らかく見つめる恭輔の笑顔があった。

(あぁ…私、恭輔のルーツを見た気がした)

そんな事を心でそっと思いながら、私も見つめる恭輔に微笑んだのだった。

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