しつこい誘いに困っていた私を助けてくれた恭輔にお礼を云った。

「九重くん、ありがとう。助かったわ」

今はふたりきりだけれど場所が社内の廊下だったので余所行きモードで話している私たち。

「いえ…其れよりも彼、あんな風によく誘って来るんですか?」
「ううん、今が初めて。というか喋るのだって以前社食で話した時から二回目だったし」
「…」
「どうしたの、九重くん」
「いえ、少しよくない噂を耳にしたので」
「よくない噂?」
「新入社員の数名の中で囁かれているんですけど…一橋くんが佐東さんを落とせるかどうか賭けをしているって」
「…はぁ、またそういう噂」
「え」
「前からそういうのあったの。誰とでも寝る女なら自分にも落とせるって馬鹿馬鹿しい賭けがね」
「…」
「心配しないで。そういうの慣れているから。適当にあしらえる程度には強いから」
「…佐東さん」

少し表情を強張らせた恭輔がクッと顎をしゃくった。

(ついて来いって事?)

アイコンタクトで気持ちを汲み取った私は先に行く恭輔の後を少し開けてついて行った。


誘われた場所はもはや社内逢引きの定番となっていた給湯室隣の用具入れ部屋。

入った瞬間、体をギュッと抱きしめられてキスされた。

「ん」
「ん…っ」

一度押し付けるだけのキスをした後は深く貪る激しいものに移行した。

「ん、きょ…恭…輔」
「はぁ…ん、んっ」

クチュクチュと小さく響く水音に段々体が火照って来てもどかしくなってしまう。

(また…このままじゃ離れられなくなっちゃう)

そう思いなんとか理性を保とうとやんわりと恭輔から距離を取った。

「…杏奈」
「会社だよ…此処」
「だって…杏奈が好き過ぎて我慢、出来ない」
「…もう、いつも其ればかり」
「何、いけない?杏奈にキスしたいって思うの」
「いけなくなんかないよ。私だって…したいって思うもん」
「…」
「だけど此処は会社だし…一度触れちゃうと止まらなくなっちゃうじゃない?私たち」
「杏奈も?」
「私も」
「…一緒か」
「一緒だよ、だからもう少しだけ我慢しよう?」

私が精一杯の笑顔で笑い掛けると恭輔の頬は少し赤みを差した。

「はぁ…本当参る。杏奈、外に出したくない」
「えっ」
「他の男の目に晒したくない。本当の意味で俺だけのものにしたい」

(おぉっ…黒い恭輔降臨!)

時々性格が変わる恭輔の理由を知ってからはこういった場面で戸惑う事がなくなった。

寧ろ違った一面を見られる事に対してゾクゾクとした気持ちが競り上がってしまって嬉しかったりするようになっていた。


私の事を心配してくれる恭輔と楽観視する私。

そんな私たちの行く先にまさか一橋さんが深く絡んでこようとは…

この時はまだ全然気が付かなかったのだった。



そして待ちに待ったGW。


(はぁぁぁ~幸せぇぇぇぇ~)

これも夢に見たシチュエーションのひとつ、運転する彼氏を助手席から眺めるシーン。

(童顔の恭輔がハンドル握っているのって滅茶苦茶新鮮!)

人並みの大人がする行為を童顔の恭輔がするというだけでいちいちキュンキュンしてしまう私はどれだけ恭輔に溺れてしまっているのだろうかと時々考える。

(溺れ過ぎて魚にでもなりそうよ)

恭輔という水がなければ窒息してしまいそうな勢いで恭輔の事が好きな私だった。

000000a5
★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチずついただけると執筆の糧になります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村