「きゃっ!」
「あぁ、ごめん、優しく下ろしたつもりだったのに妙な焦りから乱暴になってしまった」
「い、いえ…大丈夫です…」


久遠寺さんから熱っぽく求められて、どう返したらいいのか戸惑っている内にお姫様抱っこをされて地下にある一室に連れ込まれた。

(ピアノが置いてある)

部屋に入った瞬間目に入ったのが部屋の中心に置かれているピアノだった。

「此処が俺の仕事場兼寝室」
「え」

言葉を受けて見渡せば部屋の奥に大きなベッドが置かれているのが見えた。

「作曲していると時間を忘れてしまって其のまま寝てしまう事が度々あってね。だったらいっその事仕事場と寝室を一緒にしようと思って」
「…そうなんですか」

ピアノとベッドという組み合わせが私に甘美な連想をもたらす。

(あ…指…)

ベッドに押し倒され、其のまま私に跨った久遠寺さんは私の頬を優しく撫でた。

「梨々香…可愛い俺の梨々香」
「っ」

久遠寺さんの長くてしなやかな指先が頬から唇、そして首筋から鎖骨へと流れる様になぞった。

(ピアノを弾くあの指が…私の体を…)

そんな甘い触覚が私の体を粟立てた。

「君は……初めて?」
「…え」
「セックスするの」
「!」

ストレートな質問に胸がドキンと痛い位に疼いた。

「君の体を…俺以外の男が抱いた?」
「…あ、あの…」
「教えて」
「…」

瞳の奥までを見透かす様な鋭利な視線で見つめられ、嘘なんてつける事が出来なかった。

「梨々香」
「…こ…高校生の時…少しの間だけど付き合っている人がいて…」
「…」
「其の人と…」
「…したんだ」
「…」

声に出して肯定する事が出来ず、ちいさくコクンと頷いた。

「──そう」

短く呟かれた其の言葉は温度が感じられない、とても冷たい響きに聞こえた。

(怒っている?怒ってい…るんだよね?)

続く言葉を訊くのがとても怖くて、思わず視線を落としていると

「っ!」

いきなり噛みつく様なキスが私を襲った。

(な…何っ)

押さえつけられている両腕がビクとも動かず、其のまま久遠寺さんからの激しいキスに必死になって応えていると、やがて放された唇は荒い息を漏らしながら新鮮な空気を取り入れようと忙しなく動いた。

「はぁはぁはぁ…は…っあ」
「過去の事は気にしない」
「……え」
「申し訳ないが俺だって清廉潔白って訳じゃない」
「…」
「だからお互い過去の事は闇に葬ろう」
「…」
「大切なのはこれからだ」
「…」
「俺はこれから君を俺なしでは生きて行けない体に躾ける」
「! し、躾…って」
「ドロドロに愛してあげる」
「~~~っ」

久遠寺さんの妖艶な表情と言葉がまるで媚薬の様に私に浸透して行った。


(この人に愛されたい)


ごく自然にそう思ってしまった時にはもう、わたしの中に羞恥心や緊張感といったものはなく、ただ純粋に私の全てをこの人に捧げたいと思ってしまったのだった。

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