風邪をひいた母の看病、そして私の生まれた経緯の真実を知ったあの日から、私と龍の間にあった例の問題が思わぬ形で解決した。


「もう、どれだけ溜め込んでいるのよ!あともう一回回さなきゃ」

籠に積まれている洗濯物を素材別に仕分けしながら文句を云う私。

するとキッチンの方から声がした。

『歌也ちゃーん、重曹の買い置きってあるの?』

「あーちょっと待ってて」

私は一旦仕分けの手を止めてキッチンに向かった。

キッチンでは換気扇の油落としに奮闘している龍がいた。

「ごめんね、手がベトベトで此処から離れられなくて」
「ちょ…なんでゴム手袋してないの?!」
「え、ゴム手袋?」
「そう、素手で洗ったりしたらそりゃベトベトになるでしょう」
「そっか…ごめんね」
「いや、其処までしょげなくていいから。ほら、一度手を洗って」
「うん」

──と、こんな風に洗濯やら掃除やらに精を出している私と龍


其れには勿論理由があり、遡る事一週間前───


『え、家事代行?』
『そう。歌也と龍にお願いしたくて』
『俺も、ですか?』
『そう。ふたりでわたしの部屋を綺麗にして欲しいの』
『えっと、其れ、随分前から私が通ってやっているけど』

龍と共に母に呼び出されて何を云われるのかと思ったらそんな事だった。

『今までは一ヶ月に二回ほどだったでしょう?其れも無償で』
『当たり前でしょう。なんでお金取る必要があるのよ』
『そうなんだけどね。でもこれからはもっと頻繁に家の事やって欲しいのよ』
『頻繁に?』
『そう、特に水回りの事を。台所の片づけとかお風呂場、洗面所の掃除とか、こまめにやらなきゃいけない処ってあるでしょう?』
『まぁ…そういう処は普段からこまめに掃除していた方が時間もかけずに掃除出来ると思うけど』
『でしょう?だからこれからは一週間に一、二度ほど来てくれないかしら?勿論歌也と龍の都合がいい時で構わないから』
『其れはいいけど…でもどうして龍も一緒に?』
『で、其処で発生する代行料なんだけど』

母は私の疑問に答えようとはせずどんどん話を進めていく。

『だからお金は要らないって──』
『客間を好きに使っていいわよ』
『──は?』
『と、いってもわたしがいない時限定でって事になるけれど…そうね、家事をし終わった後とか』
『…何を云っているの?お母さん』

最初母が何を云っているのか解らなかった。

けれど

『其の代わり、使った後はちゃーんと綺麗にしておいてね。少しでも痕跡があったらわたしが色んな妄想しちゃうから』
『……』
『平日の朝から晩までは確実にいない。土日も…そうね、休出がある時は連絡するわ』
『……あの』
『締め切り間近は何日か会社に泊まり込みって事もあるから、そういう時にも連絡するわね』
『お母さん…』

其処まで云われて徐々に頬が熱くなって来た。

(其れって…其れって…もしかしてぇぇぇぇ~~)

もしかしなくてもそういう事なのだろうと、母にニヤッと微笑まれて確信した。

つまりは母がいない時は家事をする見返りに客間を自由に使っていいという事。

つまり、龍とふたり、掃除やら洗濯をした後、客間を使っていい───と。

(あからさま過ぎぃぃぃ~~!!)

私が頭の中で整理している間、早々に母の意図に気が付いた龍は

「佳澄さん、ありがとうございます」
「いいのよぉ。若いんだから~何日もしないなんて気が狂っちゃうでしょう?」
「はい。あ、俺ちゃんと掃除しますから。いつもピカピカにしますから」
「うんうん、龍はいい子だねぇ。はぁ~やっぱりいい男は眺めているだけで癒されるわ~眼福眼福」
「そうですか、じゃあもっと見てください」

「…」

(な…な、なんか…厭だっ)

娘のそういう事に大らかな両親ってありがたいのかそうじゃないのか戸惑ってしまう。

(しかもふたり共龍の事すっごく大好きみたいだし)

困惑しつつもそんな環境で愛を育んで行けるのだと思うと少しくすぐったい気がした。

(みんなに認められる付き合いが出来るって…幸せな事なんだよね)

未だに続いている母と龍の恥ずかしい会話を訊きながら私は心の中でそっと幸福感に溢れていたのだった。


──これによりラブホ関連問題は無事解決に至ったのだった


王子様の作り方
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