「あの…訊いてもいいですか?」
「何?」
「どうして…弱小事務所の、売れていない私なんかのアポをOKしてくれたんですか?」

そう。

最初にあった疑問はこれだった。

売れていない無名のアーティストのアポなんて一蹴されるだろうと思っていたのに予想に反してOKを貰った理由は何だろうとずっと思っていた。

私がした質問に対して久遠寺さんは少しバツの悪そうな顔をした。

(ん?)

とても云い辛そうな雰囲気を醸し出していたけれど、私がジッと見つめる視線に耐えられなくなったのか、観念した様子で口を開いた。

 「…本当の事を云うと…俺は随分前から君の事を知っていた」
「えっ!」
「ネットでさ色々検索する訳。いわゆるエゴサーチっていうの。其れでさ、度々君の名前が引っかかって自然と【LiLiCa】という名前を目にする機会が多くなった」
「そ…其れは…もしかして…私のブログも観ているという──」
「うん、観ている。というか読者登録もしている」
「えぇぇぇっ!」

余りにも予想外の言葉に心臓が口から飛び出そうだった。

(わ、私が久遠寺智里の事を散々書き散らかしている禁断のブログをまさか本人がぁぁぁ)

元々はアーティスト・LiLiCa を少しでも知ってもらおうと始めたブログ。

日常生活は勿論、仕事の事や友だちとの事を中心に綴っていたけれど、そんな中でも久遠寺智里に対しての熱い想いを【久遠寺智里】というカテゴリーを作ってまで書き綴っていたのだ。


「そんな君の所属する事務所からアポの連絡を貰った時は驚いた」
「…」
「俺はずっと君に逢いたいと思っていた。でも久遠寺智里と名乗って逢うには忍びなくて…そんな時に運よく連絡を貰ったからなんか…勝手に勘違いしてしまった」
「え…勘違いって…」
「…」
「久遠寺さん?」
「…もしかしたら…君は俺の…運命の人かも───なんて」
「~~~?!!」

(な…な、な、なななな…)

少し顔を赤らめ、睫毛を伏せてちいさく呟く其の言葉に私の胸は貫かれてしまった。

(なんて…なんてピュアな人なのぉぉぉぉ──!!)

其の瞬間、私も彼と初めて逢った時の気持ちが思い起こされた。

「わ…私も…」
「え」
「今更こんな事を云っても…信じてもらえないかも知れませんけど…あの、初めて逢った時…中山さんと名乗るあなたに…久遠寺智里のイメージが重なって見えました」
「…」
「私がずっと思い描いていた久遠寺智里が其のまま具現化された中山さんを見て…と、ときめきを感じました」
「…」

私の言葉を瞬きもせずジッと見つめている久遠寺さんに不安を覚えた。

「…中山さんが久遠寺さんだと知った今、こんな事を云っても信じてもらえないかも知れませんけど…私、本当に」
「…信じてるよ」
「え」
「君は嘘をつかないって、解っているから」

いきなり腕が取られ、其のまま流れるような動作で座っていたソファに押し倒された。

「えっ!」
「今のは…告白だと受け取っていいの?」
「…ぇ」
「俺はネット越しに君に恋していた」
「!」
「君が配信する全ての情報に釘付けになった」
「…」
「最初はただの…其の他大勢の知ったかぶりのひとりだと…そういう目で見ていたのに…」
「…」
「でも君という人を知れば知る程に、他の人とは違うと思えて来た。俺が君を知ってから二年。デビュー曲も購入した」
「! ほ、本当ですか」
「あぁ。素朴でいいと思った。多分、君が俺を『eternal』で想像した事を俺も君の曲で想像した」
「…」
「そうしたら…いつの間にか君の事が…」
「~~~っ」

久遠寺さんの言葉が嬉し過ぎて涙が出た。

「ちょ…泣かないで」
「だ…だって…だってこんな嬉しい事…」
「…」
「はぁ…幸せ過ぎて…どうにかなってしまいそう…」
「…どうにかなってしまいそうついでに…もっとどうにかなってみない?」
「…え」

不意に耳元で囁かれた艶っぽい声に私の体は震えた。

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