カタンカタンと心地よい揺れの中、ほんの少し気まずい空気がふたりの間に流れた。

(…はぁ)

チラッと隣に座っている龍を見ると俯いてしまって表情が窺えなかった。

(ちょっと…キツい事云っちゃったかな)

龍がああいう事を云うのは理解出来る。

私だって龍と同じ気持ちがない訳じゃない。

(というか多分私の方が龍と一緒にいたい気持ちは強いと思う)

龍の優しさに触れると本来持っている私の甘ったれな気持ちに拍車がかかってとことん甘やかされたくて仕方がなくなる。

でも其れは今の段階ではしちゃいけないような気がする。

龍はまだ18歳。

私だって20歳になったばかりの子ども寄りな大人だ。

(うんと甘えるのはもっと…龍が大人になってからでも充分な気がする)

今はまだ、お互い始まったばかりの恋を大きく育てる事に懸命になりたいと思った。

「…ごめんね」
「え」

か細く聞こえた声にドキッとした。

「ごめんね…歌也ちゃん」
「…」
「俺……目先の事しか考えていなくて」
「…」

徐に顔を上げた龍が泣きそうな顔をしていたから驚いた。

「俺…酷い事云った…」
「…」
「歌也ちゃんにとって武也さんや…裕翔や浬と住むあの家がどれだけ大切か…知っていた筈なのに…」
「…」
「目先の欲に呑まれて…感情のまま言葉を吐き出しちゃって…」
「…」
「こんな俺…呆れた?厭になった?嫌いになった?」
「…龍」

私の顔色を窺う様な怯えた瞳を彷徨わせる龍に私は申し訳ない気持ちになった。

(私だって思っていた願望だった)

龍とふたりで住めて、いつでもイチャイチャ出来る同棲に憧れがないなんていうのは嘘だ。

だけど

同じ気持ちだった龍が先に言葉にした事によって私は冷静に物事を考えられる様になった。

(龍を責められる立場になんてない)

「歌也ちゃ──」
「謝らないで、龍」
「…え」

膝に置かれていた龍の掌を取ってギュッと両手で握り締めた。

「呆れていないよ。厭になんてなっていないよ。嫌いになんて…なる訳がない」
「…歌也ちゃん」
「龍がそう思う気持ちが私にもあった。龍とふたりで暮らせたらいいなって…私も思う」
「…」
「…でも…今はまだ其の時期じゃないよね」
「…」
「私はお父さんの願望を叶えるための手助けがしたい。裕翔くんと浬くんがデビューしてくれるのはお父さんだけじゃなくて私の願いでもあるから」
「…歌也ちゃん」
「だから…龍もあの家で過ごす事を厭だと思わないでくれたらいいなって思う」
「お、思わないよ!俺だってあの家が好きだよ」
「龍…」
「歌也ちゃんがいる処なら何処だって…俺にとっては其処が楽園なんだから」
「ら、楽園…かぁ」
「そう、楽園、天国、パラダイス、桃源郷」
「なんかおかしいよ、其れ」
「そういう処と一緒だって意味で!」
「…うん、ありがとう、龍」
「……歌也ちゃん」

なんとか仲直り出来てホッとしたのもつかの間、少し気が緩むと私も龍も触れ合いたくなってしまう。

少し潤んだ目をした龍の顏が近づいて来てハッとした。

「ダメっ、此処、電車の中」
「…ちょっとでも…ダメ?」
「~~~ダメぇ」

やっぱりまだソッチの問題は解決して──いないかな?と頭を抱えたのだった。

王子様の作り方
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