待ち合わせしたカフェで三杉さんと向かい合って座っていた私。

「昨日の今日ですみません」
「いえいえ、高科さんからのお誘いなら毎日でも喜んで馳せ参じます」
「…」
「──と、ちょっと調子に乗っちゃったかな」
「…あの」
「気にしないでください」
「あ、はい、三杉さんだって冗談のひとつも──」
「其の気にしないでくださいではなくて」
「え」

先程までの柔和な顔つきから引き締まった表情になった三杉さんにジッと見つめられた。

「告白の返事を、してくれるんですよね」
「…ぁ」
「どうやって断ったら傷つけず済むんだろう──なんて考えています?」
「…」

(軽く…図星)

「はは、当たっちゃったか」
「あの…三杉さん」
「其れを受けての気にしないでください、です」
「え」
「いや…こういう流れ、結構慣れているんですよ、僕」
「…」
「どうも昔から好きになった人には受け入れてもらえないという経験ばかりで…」
「…」
「高科さんに関しても心の何処かでそういう予感があって…だから性急に告白をして…でも結局、いつも通りな結果になってしまったけれど」
「あの…私…三杉さんの事…嫌いじゃありません」
「え」

若干自嘲地味に話す三杉さんの言葉を少し否定したくて私は思っていた事を素直に話そうと思った。

今までの恋愛観や失恋、そして龍との事を。

三杉さんには包み隠せず話せてしまった事に少し驚くぐらいだった。


「…そっか」

私の話を訊き終えて三杉さんは少し視線を落としてふぅとちいさく息を吐いた。

「だから私…もし、龍──彼との事がなかったら…きっと」
「縁──なんだね」
「…え」
「僕は逢った順番が早いか遅いかだけじゃないと思うんだよね、恋愛って」
「…」
「例え先に僕と出逢っていても、後から知り合った彼と高科さんは恋に落ちていたかも知れない」
「其れ、は」
「恋愛には縁があるんだと思う。其れこそ大袈裟な事を云うと結ばれるべき相手というのは生まれる前から決まっているというか、前世からの縁というものが深く関わっている様な」
「…」

(前世って…三杉さんって意外とロマンチスト…?)

壮大な話の展開に少し呆けていると

「ははっ、変な事を云ってゴメンね。呆れたかな」
「いえ…そういう事を考えた事がなかったのでなんだかそういう考えが新鮮で…驚いて」
「僕自身もこんな事を考えるようになったのは出版社に勤めてからだよ」
「…其れって、今の仕事と関係が?」
「うん…BL──男同士の恋愛に関する仕事に携わっていると、色々考えさせられるんだ。どうして同性を好きになっちゃうんだろうとか、女の子と恋愛出来ないのはどうしてなんだろうと」
「…」
「全然知らなかった世界だからね、本当最初は理解に苦しんでいたんだけど…高科さん──あ、歌也さんのお母さんの方ね、に、色々諭されたんだ。好きになるのに理屈はないって」
「理屈」
「其れこそ恋は頭でするもんじゃない、心が求めてするんだって」
「なんか…解りそうだけど…大雑把ですね」
「そう、詳しく訊くとなんだか哲学的な事になって行って益々解らなくて、もっと簡単に教えてくださいって訊いたら、ひと言『縁』だって云われた」
「縁のひと言で片付けられたんですか?」
「うん。其れがまた全然解らなくてさ…悩んだ悩んだ」
「難しいですね」
「そう──難しいんだ」
「え」
「だから恋愛に関する事を考えて言葉にするのは難しいんだって、そういう事なんだよ」
「…」

(なんか全然解らないよぉ~~)

其の後も三杉さんなりの恋愛に関する考えを母の持論を交えて延々訊かされたのだけれど、其の時間は思ったよりもうんと愉しかった私だった。

王子様の作り方
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